Eライン(エステティックライン)とは
Eラインとは横顔の鼻先と下あごの先を結んだ線のことで、美しい横顔の指標となる基準線です。
美しさの基準は、国や民族・時代によって異なります。今回は日本人と西洋人でEラインを比較してみます。
美しさの基準は、国や民族・時代によって異なります。今回は日本人と西洋人でEラインを比較してみます。
西洋人のEライン
日本人のEライン
鼻先・上唇・下唇・下あごの先の全ての点がEライン上に一直線に重なるのが、日本人の理想的なEラインとされています。日本人は西洋人と比べて鼻が低く下あごも小さいので、相対的に唇が前に出る傾向があるためです。
芸能人にはEラインが整っている方が多くいらっしゃいますが、北川景子さんなどはとてもEラインが整っていますね。
西洋人の理想的なEラインといっていいと思います。
日本人の場合であれば、①が理想的、②は下あごが後退している、③は鼻先が低いというようにEラインは美容外科的な観点から分類されます。
さらにEラインのバランスを崩す原因として、出っ歯などによる「口ゴボ」(くちごぼ)という状態もあります。
この口ゴボについては一冊の本が書けるぐらいの様々な問題があるのですが、主に審美歯科領域の話題になるので、当記事では触れません。
Eラインを整える治療法は
自力でマッサージなどで改善できるか?という質問もインターネットの掲示板などではよく見られます。
しかし残念ながら自分で改善できる方法はありません。
また、メイクでカバーできるかといえばこれも無理です。というのも、メイクでは陰影をつけることで顔の表面の凹凸を見かけ上変えることができますが、これはあくまでも正面から見た場合であるため、横顔の印象を変えることはできないのです。
といったわけで改善するのであれば治療することになります。
下あごがEラインより後退している場合の治療法
このような場合には4つの選択肢があります。
①ヒアルロン酸注入法
②脂肪注入法
③プロテーゼ挿入法
④骨切り手術
この4つです。①~③は不足している下あごのボリュームを補う方法で、通常はこのいずれかを選択します。
不足分の青の斜線分を補うように、ヒアルロン酸注入、脂肪注入、プロテーゼ挿入のいずれかをを行います。
ヒアルロン酸注入法・脂肪注入法・プロテーゼ挿入法それぞれの長所短所は以下の通りです。
ヒアルロン酸注入法の長所と短所
長所 | 短所 |
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脂肪注入法の長所と短所
長所 | 短所 |
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プロテーゼ挿入法の長所と短所
長所 | 短所 |
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骨切り手術の場合
より効果を望む場合には、骨切り手術を行うことがあります。骨切り手術では、以下の図のように、あご先の骨を切り、前方に出して固定します。
鼻先がEラインより低い人の治療法は?
このような場合には主に以下の4つの選択肢があります。
①自家組織移植
②溶ける人工素材(オステオポール、オステオポア、メッシュボール、ノーズポール、ノーズチップ、PCLドーム、3Dドーム、4Dノーズなど)を挿入 ※様々な名称がありますがこれらはほとんど同じものです
③溶ける糸を挿入
④プロテーゼを挿入
①②の自家組織移植や溶ける人工素材の埋め込みは鼻先の高さが足りないので、その部分を補うものを鼻先の皮下に埋め込む治療法です。不足分である青い部分に自己組織や溶ける人工素材を埋め込んで高さを調整します。
①の自家組織移植は患者さんの耳の軟骨を採取して埋め込む方法です。
耳の軟骨を取ることで、耳が変形したり、聴力に悪影響が出ることもありません。また、軟骨を採取する際に、軟骨のみを取り出し、その周りにある軟骨膜をきれいに残せば再び軟骨が再生してきます。
詳しくは【鼻の修正手術】自家組織を移植する際、その組織を取った後にできる傷あとは目立たない?をご覧いただければ幸いです。
②のオステオポアといった溶ける人工素材は、以下のような問題があるためお勧めしておりません。
・術後1~2週間の間に外から力が加わるとずれてしまうことがある
・感染を起こすことがある
・皮膚が薄くなりオステオポアの輪郭が浮き上がって不自然に見えることがある
・オステオポアの下にある土台の軟骨が圧迫されて変形することがある
・皮膚に穴があいてオステオポアが飛び出してくることがある
・違和感や異物感がとれないことがある
・いざ取り出すとなると、周りの組織に癒着して全て取りきれないことがある
当クリニックでは近年オステオポアといった溶ける人工素材によるトラブルを解消するための除去手術を数多く行っています。その経験上からも溶ける人工素材はお勧めできないと断言します。詳しくは、プチ整形で鼻を高くするオステオポア(オステオポール)は本当に安全なのか?をご覧いただければ幸いです。
③の溶ける糸は、メスで切らずに特殊な溶ける糸を鼻先に埋め込み、鼻先を高くしたり、鼻先の形を整える治療法です。
半年~1年程度で自然に溶けてコラーゲンに置き換わるポリジオキサノン(PDO)という素材のトゲ付き糸を使います。
下の図のように8~12本の糸を、鼻先の下に立てるように束状に入れ、鼻先を持ち上げるように埋め込みます
鼻先に開けた針穴から埋め込むので傷あとはほとんど残りません。
埋め込む箇所を下から見るとこんな感じです。
「クレオパトラノーズ」「フレックスノーズ」「テスリフトノーズ」「Gコグノーズ」「ベストリノプラスティー」「ミスコ(MISKO)」などクリニックによって名称は異なりますが、ほとんど同じものです。
このあたりのネーミングには、クリニックがいかにして他と差別化するかという商魂のたくましさを感じますね。
特にクレオパトラノーズというネーミングは秀逸かもしれませんね。もしクレオパトラの鼻がもう少し低かったら世界の歴史は変わっていたであろう。という有名な言葉がありますが、それにあやかってしまうというのはなんともたくましい商魂ですね。
しかし、この治療法は以下のような問題点があるためお勧めできません。
- 数ヶ月で糸が溶けはじめ、それとともに鼻先の高さの保持力がなくなるので効果は一時的である
- 感染を起こすことがある
- 糸の輪郭が浮き出たり、皮膚を突き破って出てくることがある
- 不自然な凹凸が生じたり、左右非対称になることがある
- 違和感や異物感がとれないことがある
- いざ取り出すとなると、周りの組織に癒着して全て取りきれないことがある
④は鼻先だけでなく鼻全体が低い場合に用いられる治療法です。
L型のプロテーゼを挿入して鼻全体を高くします。
同時に鼻すじも高くなるので、美しい鼻になるメリットはあるもののL型プロテーゼは鼻先に負担がかかり将来穴が開いてしまうリスクが高いので、最近はほとんど使われません。
当クリニックは鼻のプロテーゼを抜去する手術を専門に続けております。
その経験から、L型プロテーゼはいずれ必ずトラブルが起こることがわかっているため絶対やるべきではないと断言します。詳しくは、鼻のプロテーゼを抜き続けて20年、そこから見えてきたもの(その1)をご覧いただければ幸いです。
自家組織移植、溶ける人工素材、溶ける糸を挿入、プロテーゼを挿入についてそれぞれの長所短所についてまとめてみると以下のようになります。
①自家組織移植
長所 | 短所 |
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②溶ける素材挿入※人工物
長所 | 短所 |
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③溶ける糸挿入※人工物
長所 | 短所 |
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④プロテーゼ挿入※人工物
長所 | 短所 |
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結論
溶ける人工素材や溶ける糸、プロテーゼなどの人工物は合併症を起こすリスクが高くお勧めできません。
鼻先の形成術は費用や手間がかかりますが自家組織移植がベストだと断言します。