シワの構造を言葉で表すと不規則な線状の凹みであり、大人になるにしたがって増えてきます。
いわゆる老化現象のひとつですがシワって組織学的にいうと真皮のコラーゲン線維が不均一になるために、できるものなのです。
そもそもシワはなぜできるか?
例えば小ジワは真皮乳頭層と呼ばれる部分が長期間紫外線に当たったために規則性を失い、萎縮してしまうために弾力が無くなって皮膚の一番上にある表皮を支えることができなくなります。そのために表情などの動作によってできる皮膚全体のゆがみに表皮は対応しきれないで折り目=小じわが作られます。
赤ちゃんの場合は真皮乳頭層のコラーゲンが気速的に均一にならんでいますので、どんな表情をしても小ジワができずにぷりぷりの肌を維持しています。
大きなシワは真皮乳頭層より深い位置にある真皮網状層の膠原線維が不均一になることにより、表皮を裏付けているところの密度が薄くなるために表皮が陥凹した状態が大きなシワです。こんな難しいこと解らないや!ですよね。スカートやスラックスを想像してください。折ジワがついてしまうと、アイロンをかけない限り元に戻りませんよね。それが大ジワと考えて下さい。原因はそこの皮膚の折り曲げた回数・その時の力・もともとの皮膚の傾向・生活習慣に左右されます。基本的には紫外線がシワを作ると考えて頂いて結構です。
ボトックスとはなんだ?
やっとボトックスの説明に入れます。ボトックスはそもそもボツリヌス毒素!を利用したものです。ボツリヌス菌を使うわけではなく、ボツリヌス菌から生み出される毒素を無害化したものを使用します。メカニズムとしては神経伝達物質が放出しないように働くことで、筋肉が縮むことができないようにしてしまいます。神経伝達物質を遮断すると表現する場合もあります。1996年に日本では眼瞼痙攣の治療薬として承認されました。それ以前はコラーゲンを注入することでシワの溝を埋める治療が主流でしたが、ボトックスはシワ自体を作れなくする作用があります。
どんなシワに効果があるか?
一番は前頭筋の動きによってできる額のシワです。つぎに眉間の縦シワで、アメリカでは一番人気のある箇所です。眉間にシワがあると表情が厳しく、思い悩んでいるイメージを人に与えるので積極的に治す傾向があります。眼輪筋の働きによる目じりのシワも効果があります。その他の部位も治療可能ですが、どんな人でも確実に治療できる場所は上記の3カ所と考えて下さい。
どうやって注入するか?
当院では30G以上の極細針を使用してシワの原因の筋肉に少しづつ注射をしていきます。痛みは注射する場所を冷却するだけでOKです。特に麻酔をする必要はありません。
この女性は少し痛そうな顔をしていますが、眉間にシワができて難しそうな表情になってしまう縦シワの治療のためにボトックスを打とうとしているのです。
ここで慣れない医師の場合、必要以上にボトックスを注入してしまいます。そうすると効果は大なのですが、全く表情をつくることができなくなったり、引き攣れた感じになってしまいます。TVとかでおでこはピンピンなんだけど,眉毛がつりあがっている芸能人を時々見かけますが、明らかにボトックスによる過矯正によるものです。ボトックスの効果は個人差がありますが、大多数が6ヵ月くらい持続します。つまり効果を維持するためには定期的な追加継続治療が必要になります。
上記の写真は当院の患者さんですが、なんと当年60ウン才の4人のお孫さんを持つ「おばあちゃん」です。シワが無くなって若返ったことより、ちょっと家庭内でごちゃごちゃが続いてくたびれた表情が気になっていましたが、ボトックス治療で友人に「表情が明るくなった」と言われたことが一番うれしかったそうです。
ボトックスは筋肉を緩める働きを利用して様々な治療に使用されていますが、混乱するといけないので「折ジワを治すならボトックス」と覚えて下さい。