鼻先を高くするのに最適な方法、最初に申し上げておきます。結論としては患者さんの体から採取した軟骨を埋め込むのがよいです。その理由は鼻に埋め込む理想的な埋入物(埋め込むもの)として求められる条件が8つあり、軟骨がもっとも多く条件を満たしているからです。軟骨といっても寄贈軟骨はNGです。自家組織の軟骨です。
鼻を高くするための埋入物に求められる8つの条件とは
以下の条件を満たす物が理想的といえます。
条件1: 体に馴染みやすい
体内に異物が入っているという感じがしない
条件2: 感触が自然
外から触っても埋入物が入っているかわかりにくい
条件3: 感染に強い
埋入物を入れたことで細菌感染を起こさない
条件4: 吸収されない
埋入物が体に吸収されて、徐々に鼻が低くなってしまう可能性がない
条件5: 手術操作が簡単
手術が難しいと慣れていない医師だと失敗するリスクがある
条件6: 発がん性がない
埋入物によってがんになる危険性がない
条件7: 簡単に入手できる
入手が簡単でないと施術を受けることがそもそも難しくなる
条件8: 費用対効果が優れている
定期的な再手術が必要な施術はトータルでの費用は高くなる
では実際に広く使用されている、鼻先を高くするための埋入物について確認してみましょう。
鼻を高くするために用いられる埋入物の種類
鼻先を高くする鼻尖形成術(びせんけいせいじゅつ)という手術で使用される、代表的な埋入物は下記の4種類があります。
- 軟骨
- 溶ける人工物
オステオポール・オステオポア・メッシュボール・ノーズボール・ノーズチップ・PCLドーム・3Dドーム・4Dノーズ などクリニックによって名称は異なります - 溶ける糸
クレオパトラノーズ・フレックスノーズ・テスリフトノーズ・Gコグノーズ・ミスコ(MISKO)・ベストリノプラスティー・ノーズリフト などクリニックによって名称は異なります - プロテーゼ
これら埋入物についてどれだけ条件を満たしているかを確認してみます。
1.軟骨
◯条件1:体に馴染みやすい
◯条件2:感触が自然
◯条件3:感染に強い
◯条件4:吸収されない
✕条件5:手術操作が簡単
◯条件6:発がん性がない
◯条件7:簡単に入手できる
◯条件8:費用対効果が優れている
7項目OK
2.溶ける人工物
✕条件1:体に馴染みやすい
✕条件2:感触が自然
✕条件3:感染に強い
✕条件4:吸収されない
◯条件5:手術操作が簡単
◯条件6:発がん性がない
◯条件7:簡単に入手できる
✕条件8:費用対効果が優れている
3項目OK
3.溶ける糸
✕条件1:体に馴染みやすい
✕条件2:感触が自然
✕条件3:感染に強い
✕条件4:吸収されない
◯条件5:手術操作が簡単
◯条件6:発がん性がない
◯条件7:簡単に入手できる
✕条件8:費用対効果が優れている
3項目OK
4.プロテーゼ
✕条件1:体に馴染みやすい
✕条件2:感触が自然
✕条件3:感染に強い
◯条件4:吸収されない
◯条件5:手術操作が簡単
◯条件6:発がん性がない
◯条件7:簡単に入手できる
✕条件8:費用対効果が優れている
4項目OK
結論
比較表に記載しているように、軟骨がベストの埋入物であることは明らかです。でもこれだけだとちょっとわかりにくいと思うので少し詳しく説明します。
「溶ける人工物」や「溶ける糸」のデメリット
「プチ整形」として「溶ける人工物」や「溶ける糸」を鼻先に埋め込んで鼻先を高くする、安直な方法が最近では流行しています。
しかし、下記のようなトラブルが多いため絶対にやるべきではないと断言します。
- 数ヶ月で溶けはじめ、鼻の高さが保持できなくなるため効果は一時的
- 感染を起こしやすい
- 輪郭が浮き出たり、皮膚を突き破って出てくることがある
- 不自然な凹凸が生じたり、左右非対称になることがある
- 違和感や異物感がとれないことがある
- トラブルが起こった際に取り出すとなると、周りの組織に癒着して取り切れないことがある
下記にてトラブルについて詳しく説明しておりますので、是非ご覧いただければと思います。
溶ける人工物について:
プチ整形で鼻を高くするオステオポア(オステオポール)は本当に安全なのか?
溶ける糸について:
理想的な横顔の指標「Eライン」とは?美に近づける治療法
埋め込むのは簡単ですが、取り出すのは非常に難しいため「プチ整形」という気軽な気持ちで行う施術では決してありません。
「プロテーゼ」のデメリット
「プロテーゼ」は「溶ける人工物」や「溶ける糸」に比べると、1項目OKが多いだけまだましに見えます。
しかし、鼻先を高くするためには危険なL型のプロテーゼを埋め込む必要があります。
L型のプロテーゼはLの角の部分が鼻先から飛び出るというトラブルが頻発するために、現在はほとんど使用されていません。
また、一生もつものではなくそのうち入れ替え、あるいは抜去する必要が必ず生じます。
下記にてプロテーゼの危険性について詳しく説明しておりますので、是非ご覧いただければと思います。
鼻に入れたプロテーゼが20年以上経つと、鼻の中でどうなっているのか?驚きの変化をお見せします!
軟骨のメリット
軟骨は自分の体から採取した組織なので、体に完全に馴染んで鼻の一部となります。
そのため溶ける人工物や溶ける糸、プロテーゼのような危険がありません。
また、手術した当初は少し吸収されますが(吸収される高さを見越して少し多めに埋め込みます)、その後は一生同じ高さを維持することができます。
再手術の必要がないので費用対効果が高いです。また、再度手術しなおす身体的な負担もありません。
といったわけで鼻先を高くするベストの方法は軟骨移植であると断言します。
軟骨を使って鼻先を高くする施術の方法
患者さんの軟骨を採取して鼻先に移植するのですが、体の3箇所のうちのいずれかから採取します。
- 耳の軟骨(耳介軟骨:じかいなんこつ)
- 鼻の軟骨(鼻中隔軟骨:びちゅうかくなんこつ)
- 胸の軟骨(肋軟骨:ろくなんこつ)
このいずれかですが、それぞれについて図で説明します。
耳の軟骨を取る部位
①耳甲介(じこうかい)
②耳珠(じじゅ)
③舟状窩(しゅうじょうか)
これら3ヶ所のうちある程度強度があり、比較的大きな軟骨が取れる①耳甲介から取ることが多いです。
鼻の軟骨を取る部位
鼻中隔とは鼻腔の内部を左右に仕切る壁のことで、下図の青色の部分が軟骨、茶色の部分が骨です。
鼻中隔軟骨を全て取ってしまうと鼻の支えがなくなり変形してしまうので、図の青い斜線の部分のみ取り、青色のLの形の部分はあえて残すようにします。
胸の軟骨を取る部位
青色:肋軟骨(ろくなんこつ)
茶色:肋骨(ろっこつ)
黒色:胸骨(きょうこつ)
肋軟骨は肋骨と胸骨を結合する軟骨です。通常上から数えて5~8番目の軟骨を取ります。
加齢とともに肋軟骨の骨化が進むので、使用できる部分が制限されることがあります。
各軟骨の比較
長所 | 短所 | |
耳介軟骨 | ・採取が簡単 ・傷あとが耳の裏に隠れるので目立たない ・ある程度の量が取れる | ・湾曲しているので細工の際に工夫が必要 |
鼻中隔軟骨 | ・鼻以外に傷あとが残らない ・比較的まっすぐな軟骨が取れる | ・採取が難しい ・取れる量が少ない ・適切に取らないと鼻が変形する ・他の美容外科で手術を受けている場合、すでに他の手術で使われてなくなっていることがある |
肋軟骨 | ・かなり多くの量が取れる ・固いので支持性に優れる | ・全身麻酔の設備が必要になる ・胸に傷あとが残る ・移植後に変形しやすい ・採取する際に胸膜を傷つけ気胸を起こすリスクがある |
上記のような長所短所があるため使用目的に応じて使い分けをします。
この中で最も多く採用されるのが耳介軟骨で、その次が鼻中隔軟骨、最後が肋軟骨となります。
耳介軟骨は採取しやすく、麻酔の設備も必要なく、量もそれなりに取れることが大きなメリットです。
鼻中隔軟骨は採取が難しく、また他の美容外科にて施術を受けたことのある患者さんの場合、知らないうちにすでに採取されていてなくなっていることもあります。
肋軟骨の採取の手術は全身麻酔になるため、麻酔科医や麻酔設備が必要になります。またリスクもあるためそれほど多くは採用されません。
耳の軟骨を移植して鼻を高くする鼻尖増高術とは
最も多く採用されている耳介軟骨を鼻先に埋め込む、鼻尖増高術(びせんぞうこうじゅつ)について手順を説明します。
耳介軟骨を採取する
①耳甲介
②耳珠
③耳介軟骨
こちらは耳の断面図のイメージです。青い斜線が軟骨です。概要としては下記のような手順になります。ざっとイメージをつかむにはこの方がわかりやすいかと思います。
※③は耳の軟骨を全て示しています
では詳細に説明しましょう。
1.切開する箇所を設定します
2.設定した箇所の皮膚を切開します
切開線の長さは2~3センチ位です
3.耳介軟骨を露出させます
4.耳介軟骨を切ります
5.耳介軟骨を皮膚からはがします
※耳の表側の皮膚はとても薄いので穴を開けないように丁寧にはがします
6.耳介軟骨を取り出します
※軟骨を取ることで耳が変形することはありません
7.縫って傷口を閉じます
※皮膚は中縫いと外縫いの2層で縫います
赤い点線の部分が実際に耳介軟骨を取った後の傷あとです。ほとんど目立たないことがわかると思います。
鼻に耳介軟骨を移植する
左右の鼻の中を切り、ハサミで鼻先の皮下にトンネルを掘って左右の鼻翼軟骨を露出し、縫い寄せ、その上に軟骨を移植します。
まとめ
鼻を高くするためのベストな方法は軟骨移植であり、その手術の工程もおおよそおわかりいただけたことと思います。
これを見て大変な手術なのではないか?と思われたかもしれません。
技術が必要になるものの、それほど時間がかかるものではありません。麻酔の時間を除けばおおよそ1時間ほどで終了します。
所要時間そのものはそれほどかかりませんし、一度実施すれば一生鼻の高さを維持することができます。
他の人工物を入れる手術よりも体に掛かる負担も、経済的な負担もはるかに軽くて済みます。
鼻を高くする手術をお考えであれば、軟骨を移植する手術が絶対にお勧めであることを覚えておいていただければ幸いです。