PRPとはPlatelet Rich Plasmaの頭文字を並べたもので、日本語では「多血小板血漿」という名前がついています。「血小板を多く含む血液成分」という意味です。
血小板にはケガをした時に傷口をふさいで出血を止める働きがあります。また、血小板には止血だけでなくケガを治すために細胞の増加、血管の生成を促す「成長因子」や「増殖因子」が大量に含まれています。
このような働きを持つ血小板を濃縮して注射する治療がPRP注射です。
有名なところではメジャーリーグで活躍中の大谷翔平投手は2018年に右肘靭帯を損傷した後にPRP注射による治療を受けました。その後見事な活躍をしていることは皆さんご存知のことかと思います。その他にも、田中将大投手、甲斐野央投手など多くの事例があります。
PRP注射は組織の再生を促すことで「治す力」を高める画期的な治療です。
スポーツだけではありません。手術しかこれまで治す方法がなかった難治性皮膚潰瘍の治療や、歯槽膿漏で失われた歯槽骨を再生したり、すり減ってしまった膝関節の修復といった様々な応用がなされています。
美容分野におけるPRP注射の応用
美容分野においては美肌目的でのPRP注射は、肌の若々しくする治療として行われています。ヒアルロン酸やボトックスといった薬剤と異なり、肌を「若く見せる」のではなく「肌そのものを若々しくする」治療として定着しつつあります。
PRP注射は育毛増毛にも応用されています。
毛根の毛母細胞が活性化することにより増毛効果が生まれます。更に、頭皮の毛細血管が新しく作られることによって、血流が改善することで育毛の促進がはかれるのです。
PRP注射による薄毛治療のメリットとは
他の治療で効果が出なかった場合でも効果が期待できる
近年育毛剤の進歩は著しいものがあります。またLEDやレーザー治療といった選択肢もあります。しかし、これらの治療で効果が出なかった場合、これまでは自分の毛を植毛するしか選択肢がありませんでした。植毛は外科手術であるため痛みも伴い、ダウンタイムも長く、費用も高額でした。
このようなケースでもPRP注射は効果が出る可能性が高いのが特徴です。注射するだけなのでダウンタイムもなく、費用も少なくて済む、患者さんにとってやさしい治療法なので新たな選択肢として注目を集めています。
副作用やアレルギーが起こらない
薬剤には副作用が起こることがあります。肝機能障害が起こったり、ED(勃起不全)や性欲減退がまれにですが起こります。
また、アレルギーによって蕁麻疹や体がかゆくなる方もいらっしゃいます。
これに対してPRP注射は自分自身の体から採取した成分なので、副作用やアレルギーがほとんど起こらないのです。
女性の薄毛にも有効性が高い
男性型脱毛症、いわゆるAGAの主な原因は男性ホルモンの一種である「ジヒドロテストステロン(DHT)」が、毛根を攻撃することにあります。これにより毛髪が成長する前に抜けてしまうのです。
そこでAGAに対してはジヒドロテストステロンから毛根をブロックする、フィナステリド(プロペシア)や、ディタステリド(ザガーロ)といった飲み薬が高い効果を示す事が多いのです。
しかし、女性の薄毛は男性とは異なる原因のことが多く、AGAに効果を示す前述の飲み薬の効果がなく、決定打にならないのです。また、間違って女性が服用すると、ホルモンバランスが乱れ、様々な症状が出たり、妊娠した場合には胎児に悪影響が出るリスクもあります。
これに対してPRPは性別に関わりなく効果があるのです。
発毛PRP注射を2022年4月から再開した理由
今まで美肌目的のPRP注射は実施していましたが、発毛目的のPRPは休止していました。
休止していた理由としては、とにかく事務手続きが大変なのです。
PRPといった細胞加工を伴う医療については、認定再生医療等委員会による審査、定期報告が必要といった煩雑な手続きが必要です。
この手続きは皮膚と頭髪は別扱いとなります。
美容皮膚科を運営しているので皮膚は継続していました。残念ながら頭髪についてはそれ程患者さんから認知されていないこともあって、あまり希望者がいらっしゃらなかったのです。
しかし、最近になって特に女性の患者さんから薄毛治療の要望を多くいただくようになったため、改めて準備を整えることといたしました。
書類の手続きだけではなく機材もPRPの分離・濃縮キットもすべて違います。
皮膚なら皮膚用が必要、頭髪には頭髪用の機材とキットが必要になります。
遠心分離機という血小板を分離する機械もそれぞれで専用のものが1台ずつ必要です。手狭な院内に使わなくなったものも含めて3台も置いているので大変です。
これが遠心分離機ですが、様々なPRPのために汎用的に使える機械を作ってくれればいいのにと思うのですが、そうすると儲からないから作らないのでしょうか?
PRPの分離・濃縮キットについては再開時に変更しています。これまでマイセル社のPRPキットを使っていましたが、これを京セラ製に変更しました。
海外からの輸入品だと、輸送や通関手続きなどで到着までに期間がかかります。また関税や輸送費がかかるのでそれが施術の価格にも跳ね返ります。京セラのPRPの分離・濃縮キットについては血小板の濃縮率に遜色がなく、少しですが安価に提供できるようになりました。
実際の効果は?
ここで当院で実際にPRP発毛治療を行なった40代男性の事例を紹介します。この患者さんはAGA専門クリニックにて、外用療法(ミノキシジル)、内服療法(フィナステリド)、メソセラピー、サプリメントなどいろいろな方法で治療してきましたが、効果が実感できなかったということで当院を受診されました。
治療前は地肌が透けていましたが、治療後は毛量が増え地肌がほとんど見えなくなっているのがわかるかと思います。
実際の治療の手順とは
採血
まず、肘の血管から採血します。採血量は血液検査の時よりはかなり多めに採りますが、献血と比較すると非常に少ない量です。
血小板を遠心分離機で分離します
この機械で遠心力をかけると重い赤血球などの血球成分は下に沈み、血小板は上の方に分離します。
分離された血小板をさらに濃縮します
濃縮した血小板を注射します
月に1回ずつ注射し、3ヶ月間繰り返します。その後2週間程度で徐々に髪の毛が生えてきます。
発毛PRP注射はこんな方におすすめします
- 飲み薬や塗り薬を試しても効果がなかった方
- 女性の方
- 飲み薬や塗り薬で副作用が出てしまい使えない方
- 薬剤に対し抵抗感があり使いたくない方
出来の良い「かつら」を買うと100万円以上することもごく普通にあります。自分自身の髪の毛が生えてくると考えると、もちろん高額な治療ではありますがコストパフォーマンスは非常に良く、薄毛で悩まれている方にとって良い選択肢のひとつになると思います。五本木クリニックでは、ビフォーアフターの写真を当院が発信するサイト等での使用にご協力いただけるモニター制度もございます。頭のみの撮影ですので顔出し一切不要、参加しやすいと思います。ぜひご検討ください。