物理的に経腟分娩ができない、胎児や母体に緊急事態が発生している、あるいは逆子や前回の出産が帝王切開などの理由がある場合の出産方法は帝王切開が選択されます。無事出産を終えてメデタシ、メデタシなんですが、帝王切開の傷跡が気になっている方も多いのが現実です。
昔の人は元気な子宝に恵まれたんだから、そんな見た目は気にするもんじゃない的に解釈していたようですが、実際問題として下着に擦れると痛いし、痒いのです。
帝王切開の傷跡を目立たなくする方法ってあるのか?
帝王切開の傷跡は自然と薄くなっていく場合もあり、多くの産婦人科医は一年程度で目立たなくなるよ、と伝えていますが⋯。かなり多くの女性が帝王切開の傷跡に悩まされているのが実情です。なぜ帝王切開の傷跡って目立ちやすいかというと
1:切開した場合、横に切開した時より目立ちやすい
横に切った場合、上手くいけば下着あるいは水着に隠れることありますが、縦に切ってしまうとビキニや通常の下着だとはみ出てしまう。
2:帝王切開の傷跡を目立たなくする予防的治療が継続できない
傷跡を目立たなくさせる飲み薬もありますし、塗り薬もありますが授乳のことを考えると積極的に使用したくない、と考える方もいます。傷跡が広がらないようにするためのテープ固定も育児優先となっておろそかになる場合も多いのです。
3:出産を前提とした手術なんで傷跡自体にあまり気をかけない
これは担当の産婦人科医によって違いがありますが、出産がメインであり(緊急性の高い場合は仕方ないですけど)、無事出産したことにより、仕事のほとんどは終了⋯傷跡を丁寧に縫合するのは二の次、という思考回路の医師もいます。
出産後に太ってしまって傷を中心として脂肪が押し寄せてきて、帝王切開の傷が盛り上がるのではなく、逆に不自然に凹んでしまう場合もあります。
飲み薬、注射、塗り薬で帝王切開の傷を目立たなくさせる方法
薬で帝王切開の傷跡を薄くする方法は次のような治療が考えられます。
- ◎飲み薬⋯もともとアレルギーの薬であった「リザベン」という飲み薬、これを継続していたらケロイドが薄くなった症例が多発して、キッセイという製薬会社が「ケロイド・肥厚性瘢痕」と保険適用を獲得しています。確かにこのリザベンを飲んでいると、もともとケロイドが出来やすい胸部や上腕の傷跡は綺麗になることが多いのですが、残念ながら大きく切開した帝王切開の傷跡、特に盛り上がった状態のものにはなかなか効果を発揮しません。さらに注意書きに「授乳中は避けるべき」と記されていますので、出産直後から治療を開始することも難しくなってきます。
- ◎塗り薬⋯強めのステロイドを含む塗り薬はケロイドや肥厚性瘢痕に効果がありますが、盛り上がってしまった帝王切開の傷跡に十分な効果を発揮するには、かなり長期の使用が必要となってしまいます。強めのステロイドですので、赤ちゃんと入浴したとき赤ちゃんに影響がないか、万が一なめちゃったらどうしよう、などの不安感(実は恐るほどではないのですけど)から躊躇してしまう方も多いです。子育てが終了してから治療を開始しても、その間擦れて痛い、痒い、水着が着れない状態が続いてしまいます。
- ◎注射薬⋯これまたステロイドの注射です。ステロイドは塗り薬より飲み薬、飲み薬より注射薬と副作用が強くなっていきますので、小さなケロイド・肥厚性瘢痕には適していますが、おへその辺りから恥骨にまで至る大きな帝王切開の傷跡の治療に対して適切なものではないのです⋯しかも、注射は痛いです。
となるといかに出産直後からテーピングなどで予防することが大切、と頭ではわかっていても子育て中の主婦にはそんなしち面倒くさいことをしている時間はないのではありませんか?
手術で帝王切開の傷跡を切除するという方法
手術してまで帝王切開の傷跡を無くそう、と当院でもレーザー照射を試みてきました。一回の治療で綺麗になることはなく、複数回、期間にして少なくとも1年は必要です。
いくら育児がひと段落ついたとしても、複数回の通院は時間的な負担になりますし、当然育児中の方が時間を確保することは、ご主人の協力がなければかなり厳しいことになります。そこで一回の治療で終わる
帝王切開の傷跡を手術で除去する
薬では十分な効果が得られないとすると、手術という選択肢が出てきます。例えばこの症例はかなり傷跡が目立ちますし、出産後にぜい肉もついてしまったため、かなり傷跡が目立ちますよね❗
一回の手術でここまで綺麗にできましたので、残りの小さな傷はステロイドの局所注射で十分にカバーできます。
出産のご褒美に帝王切開の傷跡の治療をもらおう❗
「いやー、元気な子供を産んでくれてありがとう、そんな帝王切開の傷なんて俺は気にしていないから❗」というオッサン多しです。妊娠には協力していて、出産の苦痛は味合わないご主人、もちろん今後・将来の育児費や学費などの金銭面の負担は当然ですが、ついでに奥様の帝王切開の傷跡の治療をプレゼントしてはいかがでしょうか?