ボトックスを注射することによってシワを改善する方法はここ10年程度でかなり一般的になってきました。多くの方がボトックス注射を希望する動機は若々しい昔の自分に戻りたい、実年齢マイナス5歳くらいに見られたい願望です。
今回は眉間のシワを消したい❗って人にぜひ知っておいてもらいたい、これを知っていれば美容系の医師もこの患者さんは邪険にできないと感じさせるような内容をお伝えします。
ボトックスで顔のシワを治療する前に、こんな効果があることを知っておこう❗
ボトックスでシワ治療をすると、こんな意外なことが起こる❗との医学論文があります。
「Treatment of depression with botulinum toxin A: a case series.」(Dermatol Surg. 2006 May;32 (5) :645-9; )では10人のうつ病の患者さんにボトックス注射によってのシワ治療を行いました。すると2ヶ月後にはなんと9人がうつ病が治り、残る一人も症状がかなり解消したとのこと。
つまり、ボトックスでシワを消したらうつ病も治ってしまったとの報告があるのです。
症例報告レベルなので信頼度としてはあまり高くはありません。
しかし、いくつかのシワをボトックスを使って治療することがうつ病の改善に繋がるのでとの報告を受け、米国では本格的にボトックス注射によるシワの治療とうつ病の関連性を調べる調査が公的機関 (NIH) によって行われています(「Efficacy Study of Botox for Depression」clinicaltrials.gov) 。
眉間の縦じわはしかめっ面と呼ばれるところが意味するように、眉間の縦じわは機嫌が悪そうな印象を人に与えます。
眉間に横シワもできます。眉間の縦のシワに比べればあまり目立ちませんが、気になる人は気になりますよね。
今回は眉間のシワはどのようにして出来るのか、そしてボトックスでそのシワを消すとどのような効果があるのかをわかりやすく説明しますね。
ご自分のシワを鏡で見て、老けたなあ、疲れた顔だな、なんで自分はこんな不機嫌な表情なんだろう、と感じた方もぜひボトックスを注射して生き生きした日常を送って欲しいです。
眉間のシワを作る筋肉は二種類です
眉間のシワは二つあります。眉間の横シワを作る筋肉と眉間の縦ジワをを作る筋肉はそれぞれ別のものであり、これらの関係を知らないでボトックス注射をしてしまうと、とんでもないことが起きてしまいます。
眉間の縦ジワを作る筋肉は皺眉筋(しゅうびきん)という名前です。
メチャ難しい漢字を使って書きます。この皺眉筋ですが、なぜか多くの美容系サイトでは読み方・ふりがなが書かれていません(笑)。この皺眉筋が縮むことによって眉間の縦のシワができます。
医師および医学生なら間違いなく知っている解剖学の教科書「グレイ解剖学(GRAY’S ANATOMY)」の学生向け教科書には、この眉間の縦ジワを作る皺眉筋(しゅうびきん)について「眉を潜めて不機嫌な表情をするときにこの筋が働く」と書かれています(グレイ解剖学原著3版 エルゼビア・ジャパン P747) 。
あくまで私の記憶なんですが、米国で一番ボトックスがシワ治療として使われるのが、この眉間の縦じわであり、その理由として他人に不快なイメージを与えるから、って米国の新聞か週刊誌・月刊誌に書かれていました。要するに眉間の縦じわはしかめっ面と呼ばれるところが意味するように機嫌が悪そうな顔に見えてしまいます。
眉間の横ジワを作る筋肉は鼻根筋という名前です。
鼻の付け根これを解剖学用語では「鼻根」と呼びます。鼻の骨(鼻骨)から始まった筋肉が眉間にある皮膚にくっついている筋肉があり、これが鼻根筋(びこんきん)です。
この鼻根筋が縮む(収縮する)ことによって、眉間の横ジワができてしまいます。まあ、眉間の横ジワというか鼻の横ジワが前述の縦じわのように不機嫌な印象を人に与えることはないと思います。グレイ解剖学によると鼻根筋は「眉間の皮膚を引き下げて、鼻背の皮膚に横皺をつくる」とだけ記載されています。
皺眉筋と鼻根筋によって眉間のシワは形成されています。
眉間の縦じわを作る皺眉筋も眉間の横ジワを作る鼻根筋もともに顔面神経によって動かされています。ボトックス注射によって顔面神経から枝分かれした細い神経の伝達を阻止することにより皺眉筋、あるいは鼻根筋、あるいは両者が収縮してシワを作らないようにすることが可能になるのです。
ボトックス注射は痛いのか?これは針の太さに左右されます
ボトックスを皮下に注入するボトックス注射によるシワ消し治療。一度受けてみたいけど、痛そうだから嫌だ、って方が実は多いのです。あまりにも痛みに弱い人には貼る麻酔(ペンレステープ)を使うことが当院では多いです。通常はアイスパックを注射する部位に当てる冷却麻酔で十分に痛みはコントロールできています。
注射時の痛みの原因の一つは針の太さです。
針の太さはゲージ(G) で表します。ゲージが大きくなればなるほど細い針になり、ゲージが小さくなればなるほど針は太くなります。一般的に筋肉注射では22から25G (ゲージ)の針を使用して、皮下注射では23から25G(ゲージ)を使用している医療機関が多いようです。
針の根元(針基)の色で針の太さがわかります。世界中でIOS規格が採用され統一されています。
当院では痛みを軽減するために、筋肉注射では26Gを皮下注射では26G❗を使用しています(開業医の場合、注射が痛いだけでヤブ医者呼ばわりされちゃいますので)。
ちなみに男性更年期障害の治療に使用する薬剤は油性でドロドロしているために、筋肉注射時には23Gを使用します。
当院でボトックス注射に使用する針は上の図にない、さらに細い30Gを使用しています。
これは一般の医療機関が入手可能な針では一番細いもの、つまり痛みを感じることが少なくなる針を使用しています。
以前、もっと究極の極細針である33Gを導入したことがあります。しかし、ボトックスを注入しようとすると、針があまりにも細すぎてグニュグニュしてしまい、余計に痛みが強かったために速攻で使用中止としました(これめちゃ高額で確か一本500円近かったかも)。
なお、インスリン注射には32Gを使用することがあるようですが、針の長さが短いので美容目的でボトックスを注射するには適していません。
ボトックスを注射する際の針の太さについて「The influence of needle size on pain perception in patients treated with botulinum toxin A 」(Acta Derm Venereol. 2011 Jan;91 (1) :72-4.)という論文があります。
38人に対して27Gと30Gの針を使って脇に注射をしました(治療の目的は多汗症です)。両脇にボトックスを注入する必要がありますので、片方は27Gで、もう一方は30Gの針を使用したようです。結果的には30Gを使った方が痛みが少なく感じた、との結論を得ています(この実験、若干問題がありますが今回はツッコミません)。
まあ、これに反するような結果、30Gと32Gの針を使ったボトックス注射は痛みに差が無かったことを伝えた論文もあることはあります(「No difference in pain between 30-, 32-gauge needles for periocular botulinum toxin type A injections」(Ophthal Plast Reconstr Surg. 2009;25 (5) :376-377.)。
30Gの針の太さは0.31ミリで32Gの針の太さは0.23ミリですから、もともとあまり差がないように感じるのは私だけでしょうか?
ボトックス注射の痛みは痛いと感じる人、痛くないと感じる人、まああの程度の痛みならと感じる人に分かれます。痛みを感じる、感じないはかなり個人差があるとお伝えしておきます。
実は私は「痛い」と感じることが多いです(あのねー、スタッフの皆さん、院長である私がボトックス注射は痛い、って言っているんですから、冷却麻酔くらいしてよ❗)。
ボトックス注射の効果持続時間は?
ボトックスでシワを消しても、永久的に効果があるわけではありません。多汗症の場合は販売元は4から9ヶ月程度です、とすごい幅で説明しています(グラクソ医師向けサイト ボトックスより)。さらに「個人差があります」とも記載されています。
今回取り上げた眉間のシワに対しての効果持続期間は2から4ヶ月と当院は考えていますので、3ヶ月ごとの定期的なメインテナンスを推奨しています。
ボトックスの効果がある日突然切れるようなことはありません。徐々になんとなーくシワがまた出てきてしまったと感じた時期にボトックスを再度注射することで、いつまでも若々しく不機嫌じゃない表情を維持することができるのです。
以上、ボトックス注射で眉間のシワを消したい❗と思っている方はぜひ覚えておいてくださいね。