これから乾燥する時期になりますが肌のトラブルとして一番気になってくるのが「保湿性」の効果です。
「カサカサがプルプルに!素肌力劇的アップ秘技」なんてタイトルで「NHKためしてガッテン」でさえ取り上げたくらい乾燥肌は女性にとって大問題です。女性だけでなく男性でも気にされる方も増えています。
ヒアルロン酸という名前だけが先走っていて実際どんな成分であり、どんな効果があるのか、いいことばかりではないのではないか?といった疑問・質問にわかりやすく説明してあるものって意外と少ないので、できるだけ簡単に解説してみます。
ヒアルロン酸は注射や化粧水やサプリメントとして使われているけど、本当に効果あるの?副作用は?と気になった方は是非ごらんください。
ヒアルロン酸の成分ってなんなの?
難しく言うとN-アセチルグルコサミンとグルクロン酸とによって構成された高分子の物質です、ですが元々は目の玉(眼球)のなかに詰まっている硝子体の成分として発見されたものです。性状としてはネバネバした(粘性が高いと言います)もので皮膚や筋肉や軟骨を構成する主成分となっています。人間の体を作っているのは無数の細胞ですが、この細胞同士をくっつけ合い勝手に細胞がバラバラに移動しないようにしている「結合組織」の主成分なのです。
人間が人間の体を形として維持するためには絶対に必要な成分なのです。この辺りの説明非常にわかりやすいと思いますが(自画自賛か 笑)、厳密な医学的説明としては十分ではありませんがこのブログは医学専門家に向けて発信している訳じゃないのでこの解釈の仕方でも大間違いではありません。ちなみにヒアルロン酸が発見された眼球の中身は水分が99パーセント含まれると言われていて、これだけ多量の水分が維持できるのもヒアルロン酸があるからなのです。つまりヒアルロン酸は元々人体に存在していて、非常に高い保湿性・水分保持力をもっている、という訳です。
ヒアルロン酸を注射する場合の注意点について
ヒアルロン酸は整形外科分野では膝の軟骨が年齢とともに減少してきて、痛みを伴ったり、スムーズに動かなくなる症状に対して積極的に注射として使用されています。直接関節内に注入して使用されており安全性に関しては問題は無いと考えて良いのです。実際問題として関節に直接高分子で構成されるヒアルロン酸を注射しますので、針も少し太めで結構痛いですが。これを美容医療分野で使用しているのが美容皮膚科でみられる「しわを改善するヒアルロン酸注射」です。
1:気になるヒアルロン酸注射の副作用
以前はしわの治療に対しては美容皮膚科ではコラーゲン注射が使用されていました。コラーゲンも元々人間の体に存在するものですから、副作用は無いように感じられますが、コラーゲンとヒアルロン酸には大きな違いがあるのです。コラーゲンを構成する成分はタンパク質です。タンパク質は三大栄養素といわれるくらい人間が生きていくために必須の栄養なんですが、アレルギーを引き起こす原因物質でもあるのです。そのため、コラーゲンでしわを治療する場合は事前にテスト注射をして、アレルギー反応が出現しないかを確認して数日後に本格的に治療が開始されていました(いきなり使用していた医療機関も結構ありました)。
一方ヒアルロン酸はタンパク質で構成されているのではなく、前述のアセチルグルコサミンとグルクロン酸が結合しあった糖ですので、アレルギーを引き起こすことは、純粋なヒアルロン酸を使用している限りはあり得ません。また、高分子であり、粘稠性が高いので細い注射針だと、しわなどの治療箇所に注入しずらくなっていますが、なるべく細い針を使うか、または貼る麻酔薬や塗る麻酔薬を使用することで痛みを伴わないで治療できるように医療機関ごとに工夫をこらしています。このように副作用も無く安全に使用できるヒアルロン酸注入ですが、なぜかトラブルを起こしてしまうクリニックが結構多いので、しわの治療を控えてしまう方が出てくることが残念でありません。なんで副作用とか失敗と言われるようなことが、このヒアルロン酸で起こるのか説明してみます。
2:ヒアルロン酸を目の下の小じわ、涙袋の改善などに多く使われています
目の下の皮膚ってかなり薄いので、ちょっとした刺激で内出血を起こしたり、腫れ上がったりし易い場所なのです。ここにできるしわも大きなシワではなく細かいものが多く「ちりめん皺」なんて表現を使うこともあります。年齢とともに目の下が出っ張ってくる、垂れ下がってクマが酷くなる、垂れ下がって小ジワではなく、深いシワを刻み込むこともあります。そのために美容的治療に使用されるヒアルロン酸は硬さ、濃度、粘稠性によって様々な薬剤が揃っています。
一般的な考え方として硬いものは長期間効果が持続して、軟らかいものは効果はあまり長く継続しなのですが、「このヒアルロン酸は長持ちしますから、ぜひ当院で治療してください」的なアピール・宣伝文句を使用しているクリニックが残念ながら存在しています。元々ヒアルロン酸の安全性は体の成分と同じであるということを根拠としていますので、月日とともに自然に代謝されていきます⋯つまり、無くなってしまいます。それを故意に長期間効果を持続させるために余計な成分を混ぜ込んだ薬剤も使用されているのです。ヒアルロン酸は安全であるために、効果は一生のものでは無いということを認識していただけたらと思っています。
目の下の小じわや目袋の改善の為に引き起こされる副作用というよりは失敗も目立ちます。シワにそって均一に注入すればそんなことは起きないのですが「だま玉」状になって「凸凹」してしまうのです。これは明らかに未熟な技術によって治療された場合や皮膚の状態に合致したヒアルロン酸を選択しなかったことによって引き起こされています。幸いにして此の様な場合は凸凹を作ってしまったヒアルロン酸を溶かす薬がありますので、解消することは困難ではありませんが、余計な成分を混入させたヒアルロン酸の場合は思ったように奇麗に戻すことができない悲惨な結果を招いてしまいます。
少し前までわざわざ「涙袋の形成」つまり涙袋をヒアルロン酸によって作るというのが流行ったようですが、当院の美容皮膚科・美容外科部門の趣旨とは大きく外れますので控えていました。そういえばアンジェリーナ・ジョリーの様な唇にしたい、とう方も結構いましたね、当院ではそのような施術はお断りしていましたが。
3:法令線治療におけるヒアルロン酸注射で鼻が壊死したのは副作用よりは未熟な技術による失敗
これは本当に恥ずかしい副作用ではなく、明らかな失敗です。ヒアルロン酸注射で一番治療がし易く効果がでるのが「法令線」です。鼻の脇から唇の端にできるシワで医学用語では「鼻唇溝」と読んでいます。顔の血管って複雑な走行をしていますが、法令線の下にある動脈の枝が小鼻に栄養を行き渡らせる為に存在しています。法令線にヒアルロン酸注射をしたときに一番注意をしなければいけないのが、この動脈に注入しない、ということです。血管に注入してしまいますと血液の流れを塞き止めてしまって、それより末端の皮膚に血液がいかなくなってしまうからです。
これで大失敗が起こって患者さんが悲惨な目にあったというのが海外の症例報告では有名な論文となっています。そんな初歩的な失敗(ミスとは呼べません)を恥ずかしいことに日本のチェーンクリニックが起こしてメディアに取り上げられています。この壊死してしまった部分を治す方法は「皮膚移植」しかありませんが、そんな未熟な医師が在籍するクリニックで皮膚移植をしようなんて決して考えてはいけません。
詳しくは「美容整形でヒアルロン酸を入れすぎると悲惨なことになります。特に鼻や眼の下は壊死や失明のリスクが」をご覧ください。再度書くのも憚れるくらいの未熟かつ勉強不足な医師がいることが悲しいです。
どんな悲惨なことになったかをお見せしたいのですが、一応閲覧注意な画像ということでワンクッションいれさせていただきますね。
ヒアルロン酸を含む化粧水に効果はあるの?
保水性が抜群であるヒアルロン酸に化粧品業界が目をつけないわけがありません。実際にヒアルロン酸を含んだ化粧水はお肌を乾燥から守ってくれます。しかし、インフォメーションの仕方に問題があります。高分子であるヒアルロン酸があたかも細胞内(本当は細胞の間なんですが⋯)に取り込まれるような表現をしているものが目立ちます。
人間の皮膚ってもともと外からの異物を体内に侵入させないために存在しているので、簡単には体の中に薬剤が入り込むことはできませんし、さらに高分子であるということは大きなもの構成物ですので直接肌の細胞内(しつこいけど本当は細胞の間なんですが⋯)に浸透することは考えにくいのです。洗顔後は皮膚は自分自身の脂を分泌して肌に潤いを持たせようとしますので、洗顔後にヒアルロン酸入りの化粧水を使用して水分を皮膚と化粧水の間に十分保持させてそのうえから油分を含む、美容液や美容クリームを塗って肌を乾燥から守るという方法は十分効果を期待できます。
NHKのためしてガッテンで「カサカサがプルプルに」と紹介された方法はこれです。普段、「NHKの健康番組でためしてガッテンが非常に困ったちゃんなんだよね」と言っている私ですが、これは間違いなくこれからの乾燥が気になる季節には必要なスキンケアの方法だと考えます。さらに近年「インナードライ」なる肌のトラブルも盛んに言われていますし、にきび治療薬の世界基準である塗り薬を使用する上で半分以上の方に生じてしまう「カサカサ感」もこの方法で解消することが可能となっています。
飲むヒアルロン酸(サプリメント)は効果はハッキリ申し上げますが、ありません❗
かなり長文になってしまいましたが、健康食品であるサプリメントの効果はどうでしょうか?私お得意の国立健康栄養研究所の見解によりますと「関節痛を緩和する、美肌効果があると言われているが現時点では経口摂取によって人体に有効であるという信頼できるデータはない」と冷たくあしらわれています。気になる安全性ですが「適切な使用であれば経口摂取についてはおそらく安全だろうが、安全性を裏付ける信頼できるデータはない」とさらに冷たく記述されています。万が一に備えてでしょうけど妊娠中は避けるべきでありとも追記してあります。
実は広告に嘘は明記されていない
実はよくよくヒアルロン酸のサプリを販売している会社の広告を見ますと「ヒアルロン酸を食べることによって体内のヒアルロン酸が増える」とは一切言っていません(まともなサプリ会社のものに限り、非常識な会社の広告はどうなっているかは調べていません)。
「ヒアルロン酸が潤いをサポート」
「1グラムのヒアルロン酸が6リットルの水を保持」
「年齢とともにヒアルロン酸は減少する」
「うるおい成分で肌を内部からサポート」
などという表現を取っていますが、
- ヒアルロン酸サプリが肌をプルプルにする
- ヒアルロン酸サプリが膝の痛みに効果がある
とは一切書いてありません。
つまり、ヒアルロン酸サプリメントを飲むこと(食べること)が肌や膝の軟骨に対して、なにかの影響を与える(サプリであるので効果・効能を書いた時点でアウトですが)とは主張していないのです。
サプリメント販売側は、ウソはついていないわけです。
ということは購入者が一方的に勝手に判断して自分の悩みをこのサプリメントが改善・解消してくれると思い込んでいるのです。
でもそのようにユーザーが受け止めるような広告をすることって良いことなのかな?という単純な疑問がわいてくるヒアルロン酸を含むサプリメントでした。
2020年4月18日追記現在当院で主に使用しているヒアルロン酸「ジュビダームビスタボリューマXC」の効果等について体験レポートを書きました。
追記:新しい方法で私自身がヒアルロン酸で「ほうれい線」を治療した体験レポートはこちら⋯「シワに直接注入するのは古い、新しいヒアルロン酸の使い方はボリュームアップとハリを蘇らせてタルミを治すのだあ❗」
当院のヒアルロン酸はこのような感じでおこなっています