シワ伸ばしや、肌のハリ戻し、へこみのボリュームアップなどが手軽にできるということで、最近、大人気の治療法がヒアルロン酸注射です。お手軽なイメージのあるヒアルロン酸注射は、副作用やトラブルとは無縁そうなイメージをお持ちかもしれませんが、全然そんなことはありません。
施術後の修正はヒアルロニダーゼで出来ますが、当院のヒアルロン酸注射で修正を行うことは極めて稀で、ほぼ他院修正です。つまりヒアルロン酸注射がきちんと出来ていないケースが多いのです。このページをご覧の方には、せっかくのクリニック選び・医師選びを間違えて欲しくないので参考にしてくださいね。
ヒアルロン酸注射後のトラブルが急増中
手術のようにキズ跡が残ったり、何日も人前に出られないといったダウンタイムもなく、気軽に受けられるため、ヒアルロン酸注射を希望する方が急増しています。
しかし、それに比例するように、ヒアルロン酸注入後のトラブルで悩む患者さんも跡を絶たないのが現状です。
先日も、このような報道記事が出ました。
この記事の中にある「フィラー (filler) 」とは、英語で「埋めるもの」「詰め物」の意味の単語で、美容医療的にはヒアルロン酸やコラーゲンなど、皮膚や皮下に注入する注入剤のことを指します。
手軽なヒアルロン酸注射、実は重大な合併症を引き起こす危険性
簡単、手軽な面ばかりが強調されるヒアルロン酸注射ですが、実は重大なリスクもはらんだ、とても注意を要する治療法なのです。
一番怖い合併症としては、ヒアルロン酸が血管の中に詰まることによって起こる、失明や脳梗塞、皮膚の壊死です。
私の専門分野は、形成外科・美容外科なので、メスで切る手術もよく行っていますが、外科手術をするときよりも、ヒアルロン酸注射をするときのほうがずっと緊張します。
手術の場合は、切って皮膚をはがして、中の血管や神経などを直接目で確かめることができます。
しかし、皮膚の上からおこなうヒアルロン酸注射では血管や神経などの大切な組織を直接見ることはできません。手探り状態で行う施術なのです。
顔のどの部分に大事な神経や血管が通っているかは、解剖学の教科書を見れば載っています。しかし、人間の身体の難しいところは、個人差があって、神経や血管の位置、形が一人ひとり微妙に異なっていて、必ずしも教科書通りになっているとはいえません。
ヒアルロン酸の注入の人気部位が危険エリアに集中している
さらに厄介なことに、ヒアルロン酸の注入希望の多い部位(目周り、鼻周り、眉間など)は、大事な血管・神経が集中していて、細心の注意を払って注射しないと、重大な合併症を起こすリスクの高い危険エリアなのです。
最近、ヒアルロン酸注射の需要が多いものですから、形成外科といった美容外科の基礎となる科の研修も積まず、にわか仕立ての未熟な医師が見よう見まねで注射するケースも増えており、トラブルが増加しているのです。
ヒアルロン酸注射を安全に行うためには、重要な血管・神経を熟知することはもちろんのこと、血管内に誤って注入しないための様々な予防手段をとり、万が一合併症が起きた場合には的確な対処ができることが大前提となります。
安心してヒアルロン酸注射を任せられる医師かどうか、簡単にチェックする方法
以上のように、重大なリスクを伴うヒアルロン注射は医者選び、クリニック選びが重要です。
安心してヒアルロン酸注射を任せられる医師かどうかを簡単にチェックできる質問が3つあります。
- 「万が一ヒアルロン酸が血管の中に詰まったら、どうしますか?」
- 「注射の針は、どんな針を使うのですか?」
- 「ヒアルロン酸注入後に何か心配なことがあったら24時間以内に担当医と連絡がとれますか?」
カウンセリングや診察の時、担当医に、それとなくこの3つの質問をしてみてください。それに対してどのような返事がかえってくるかによって、すぐに判定できます。それぞれの質問の意味と回答の判断ポイントを解説します。
質問1「万が一ヒアルロン酸が血管の中に詰まったら、どうしますか?」
こんな医師には任せられない!不適格な答え
「今まで5000例以上治療してきましたが、血管が詰まった例など1例もありませんから大丈夫です」
「そんな不要な心配はいりません。我々専門家に任せてもらえばちゃんとやりますから」
具体的な治療法のことは説明せず、「そんな例は起きたことがない」とか「うるさいことは言わず、専門家に任せなさい」などと安請け合いする医師は要注意です。
この医師なら安心!適切な答え
「血管が詰まった兆候があれば、ヒアルロン酸を溶かすヒアルロニダーゼという薬をできるだけ早く注射します。さらに、血管を広げ、血流をよくする薬剤を使ったり、温熱療法などをおこなう場合もあります。」
ヒアルロン酸が血管に詰まった時には、とにかく、注入したヒアルロン酸を速やかに溶かすことが重要です。さらに、血管を広げ、血流をよくする作用のある様々な薬や、温熱効果のある機器を使った治療などを行うのが正しい対処法です。
質問2「注射の針は、どんな針を使うのですか?」
こんな医師には任せられない!不適格な答え
「注射するときに使う普通の針です」
「ヒアルロン酸製剤についている付属の針を使います」
ヒアルロン酸製剤には注入用の専用針がセットになって付いているものが多いですが、いずれも針先がとがった鋭針で、血管や神経を傷つけてしまうリスクが高くなります。
血管の中にヒアルロン酸を注入してしまうという最悪の事態を避けるためには、針先がとがっていない特殊な鈍針(マイクロカニューレ)を使うのが基本です。しかし、この針は別売りで、けっこう高額のため、医療機関にとっては余分に経費がかかってしまうことになり、針代として別料金を請求するクリニックもあります。当院では患者さんの負担なく、この特殊な針を使うようにしています。
この医師なら安心!適切な答え
「血管や神経を傷つけないように、先が丸くなった特殊な注入針(鈍針)を使って注入します。重要な血管や神経の通っていない皮膚のごく浅い部分のみ例外的に先の尖った針を使うことがあります。」
これらは普通の針に見えますが、拡大してみると、針先が丸くなって、側面に小さな穴があいています。
質問3「ヒアルロン酸注入後に何か心配なことがあったら、24時間、担当医と連絡がとれますか?」
こんな医師には任せられない!不適格な答え
「ヒアルロン酸注射はとても安全性の高い治療なので、夜中に急変して緊急処置が必要になることはありません」
「夜間の緊急連絡は外科手術を受けた方専用になっています。ヒアルロン酸注入後のお問い合わせは診療時間内にお願いします」
ヒアルロン酸が血管に詰まった時は一刻も早く対処する必要がありますから、このような危機管理体制の甘いクリニックは要注意です。
この医師なら安心!適切な答え
「ヒアルロン酸注射の合併症で一番怖いのが、血管が詰まってしまうことです。血管が詰まると、皮膚が白くなったり、赤くなったり、腫れたり異常な症状が出るので、少しでも異変を感じたら、夜中でも気にせず、できるだけ早く連絡してください」
24時間、いつでも直接担当医と連絡がとれるというのが重要です。医師以外の担当者ではダメです。大したことなさそうな症状でも重大な合併症の兆候のことがあります。医師以外のスタッフが自己判断で安易な応対をしないよう、必ず担当医師が責任をもって判断対処することが重要です。