【医師が回答】鼻プロテーゼ抜去→自家組織に入れ替える手術に関する質問

鼻整形

鼻に入れたシリコンインプラントを抜く手術に関するFAQ

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平成28年10月に厚生労働省から発表された医療施設調査報告によると、日本国内で美容外科を標榜している施設は124あります。

そのほとんどの施設で、鼻の美容形成手術が行われ、日本全国のあちこちで、毎日のように鼻にプロテーゼを入れる手術がおこなわれています。

鼻にプロテーゼを入れた後、トラブルが発生した場合に、的確な治療ができる医療機関は限られています

プロテーゼは本来、人間の体には存在しない異物です。長期間体内に入れ続けることにより、後から遅れて様々なトラブルが発生してくる危険性があります。

ところが、困ったことに、トラブルが発生した場合に的確な治療ができる医療機関があまりにも少ないのです。

プロテーゼを入れる手術は比較的簡単なため、どこの美容外科でも安易に異物を入れる手術をおこなっていますが、いざ、プロテーゼによって問題が発生した場合に、きちんと対応できるクリニックがほとんどない状況です。

当院は鼻整形後のトラブルを専門的に治療する数少ないクリニックです。そのため、患者さんは全国各地からたくさんいらっしゃいますし、最近は海外在住の方の来院も増えています。

海外在住のNさんの場合

Nさんは海外在住の日本人で、40代の女性の方です。約20年前に日本のクリニックでL型プロテーゼを入れました。これまでのところ、鼻の状態に特に問題はなく鼻の高さも気に入っています。ただ、鼻筋がまっすぐすぎて目立つのと、写真を撮った時に、鼻筋が不自然に光って見えること、眉間の部分に、どこからプロテーゼが入っているのか、その断端がわかるところが気になり、当院を受診されました。

上の写真は初診時のものです。長年、異物によって圧迫され鼻の皮膚がかなりうすくなっており、それが原因で、プロテーゼの輪郭が不自然に直線的に浮き立ったり、異常に光ったりしています。また、L型プロテーゼの角の部分が当たる鼻先の皮膚がペラペラにうすくなっており、このまま放置すると、将来、鼻先の皮膚に穴が開き、プロテーゼが飛び出してくる危険性があります。

そこで、プロテーゼを抜き取り、代わりに自己組織(筋膜、軟骨)を移植して形を整える手術をおこないました。


術前


術後

上の2枚の写真は手術前の正面・側面の写真です。下の2枚の写真は、手術6か月後の正面・側面の写真です。

鼻の形を極力変えないように、術前の形を保ったまま、中身のシリコンプロテーゼを自己組織に入れ替えています。

術前に、不自然に浮き上がって見えていた鼻筋がやわらかい自然な形になり、異常なテカリも消えています。

Nさんは海外にお住まいなので、手術前に何度も通院して納得いくまで診察、カウンセリングを受けることができません。そこで、来院前にメールで頻繁にやり取りを交わし、疑問点を徹底的に解消し、手術の内容について十分に理解していただいたうえで帰国し、手術をするスケジュールを組みました。

この過程において、Nさんからいただいた質問が実に細やかで、これから同様の手術を受ける他の患者さんにとって大いに参考になると思い、ここに掲載させていただくことにしました。

自家組織移植による鼻の修正手術に対するQ&A

Q1.手術にかかる時間はどれくらいでしょうか?

A1.実際に手術をしている時間は60~90分ほどです。手術前の準備の時間や手術終了後にお休みいただく時間を入れますと、余裕をもって約3時間くらいをみていただくと十分です。

Q2.手術日を含め、何回の通院が必要ですか?

A2.手術後、翌日から1日目、2日目と数え、3日目に鼻に貼ったテープをはがし、組織を固定している糸を抜き取ります。手術後7日目にその他のいとをすべて抜糸します。抜糸終了後は、1か月後、さらに2か月後、さらに3か月後に定期検診をおこない、異常がないかチェックします。術後約半年で移植した組織が定着しますので、その時点で治療終了となります。これらを合計すると、6回の通院が理想的です。ただ、遠方よりご来院の方は、通院回数を減らすことが可能です。テープ除去と抜糸を7日目に同時に行い、さらに術後検診も、特に異常がなければ、6か月後のみとすることで、最少3回までに減らすことができます。

Q3.初めて受診し、診察・カウンセリング後に、当日にすぐ手術することは可能ですか?

A3.前もってご予約を頂き、手術枠を確保していただきましたら可能です。遠方からご来院の場合は、通院回数を減らすために、来院前に、メールでの質問・回答や電話でのカウンセリングをおこない、手術内容に対して十分にご理解、納得をいただき、初診時に当日手術を行うことも可能です。

Q4.海外から一時帰国して手術を受ける場合に、滞在期間は最短でどのくらい必要ですか?

A4.手術から抜糸まで1週間必要です。さらに、2~3日の余裕をもって、10日間あれば大丈夫です。

Q5.半年後にまた日本へ一時帰国する予定ですがその際にアフターケアとして追加費用がなく受診は可能ですか?また手術後に在住国に戻ってからメールでアフターケアを受けることは可能ですか?

A5.いずれも可能です。術後1年間は無料でアフターケア可能です。手術後は、万が一に備え、24時間担当医と直接連絡の取れる体制をとっています。ご不安、ご心配なことがありましたらいつでもご相談可能です。

Q6.自己組織は体に吸収されると聞きました。移植の際はその分を考慮して少し多めに移植するのでしょうか?もしそうであれば移植直後は鼻が高く、次第に少しずつ低くなっていく訳ですが吸収はどのくらいで落ち着くのでしょうか?また吸収され続けて鼻がとても低くなってしまうことはないのでしょうか?

A6.通常、自己組織の定着率は平均すると8~9割くらいです。術後半年くらいの間に1~2割ほど吸収されますので、その分を見越して、多めに移植します。半年で定着し、その後どんどん吸収されることはまずありませんが、たまに予想以上に吸収され、追加で組織移植を行った方が今までに3名ほどいらっしゃいます。

上の3枚の写真は、それぞれ上から順に、術前、術後1週間、術後6か月の状態です。吸収を見越して、多めに組織を移植しますし、腫れの影響もあって、術後1週間の状態では鼻根部がかなり高く見えます。まつ毛の位置と比べていただくとわかりやすいのですが、術前の鼻根部の高さはまつ毛の長さの半分くらいの位置です。術後一週間では、まつ毛の先端よりも高くなっています。術後6か月では、ほぼ術前と同じ高さに落ち着いています。

Q7.術後の腫れはテーピング除去をする3日目には人前に出ても気にならないくらいにおさまるのでしょうか?またマスクをすることは手術部位に影響はありますか?

A7.3日目でケーピングを除去すれば大きな腫れはほぼひいていますので人前に出られます。ただし細かい腫れはまだ残っていますので、よく知った方だと気づかれる可能性はあります。マスクはいつでもかけられます。制限はありません。

術前

術後3日目にテープを除去した状態

軽い鼻の腫れや、目のまわりに薄い黄色の内出血斑がありますが、目立ちません。テープがとれれば、メイクも可能ですので、さらにカモフラージュできます。

Q8.耳介軟骨は細長い棒状にして移植すると将来変形することがあるという記事を見ました。そのようなことは可能性として有り得るのでしょうか?

A8.おっしゃるように、細長い棒状の軟骨は、時間が経つと彎曲したり、変形することがあります。そのため、当院では棒状の軟骨は入れません。細かく砕いたり、小片状に細工をして移植しますので、変形する危険性はありません。

Q9.プロテーゼを抜いて自己組織に入れ替える方法ですが、先生はいつからこの手術を始められたか教えていただけますか?また前述の変形が起きた症例はありますか?

A9.私はこの手術を23年前から行っています。その間に1000例ほどの経験がありますが、以前勤務していた病院で数例棒状軟骨の変形例がありましたのでその後改良して、鼻筋の部分は筋膜移植のみ、あるいは細かく砕いた軟骨を筋膜で包んで移植する方法にしています。改良後は変形した例はありません。

Q10.五本木クリニックで自家組織移植の手術を受けられた患者さんが、術後に気になる・不安などで相談されることはどのような内容が多いのでしょうか?それに対し、先生はどのように対応・アドバイスをされていますか?

A10.一番多い心配が組織の定着率です。これだけはやってみないと予測不可能で、ごくまれに予想以上に吸収されて追加で組織移植をした方が3名ほどいます。吸収分を見越して、多めに組織を移植することで、吸収分をカバーするように対策をしています。多くの方はバランスの悪い大きすぎるプロテーゼが入っていて、高さは控えめにしたいという希望の方が多く、術直後は元の高さと同じくらいに多めに組織を移植し、そこから半年の間に少しずつ吸収されて、最終的にバランスの良い自然な鼻に落ち着く経過となります。

Q11.鼻筋には軟骨を入れず筋膜のみで十分な高さを出せるのでしょうか?また砕いた軟骨を鼻筋に移植することは可能なのでしょうか?

A11.骨格のはっきりした男性的ながっちりした鼻が希望の場合、ギリシャ彫刻のような外人風の高い鼻が希望の意場合は筋膜と砕いた軟骨の両方を使います。日本人女性に合った自然な鼻がご希望の場合は筋膜だけでも充分高さがだせます。

Q12.手術後はなるべく安静にしていた方が回復は早いのでしょうか?それとも通常の生活をしていても変わりはないのでしょうか?

A12.術後はずっとベッドで横になっている必要はありません。手術した部位を心臓よりも高い位置にキープしていた方が腫れが引きやすいので、寝ているより、立ったり、座ったりしてある程度動いた方が回復が早いです。

Q13.在住国では日差しが強く、屋外にいるときや車の運転時にサングラスをかけることが多いのですが、組織を移植した部分にサングラスがあたって不具合が生じる危険性はないのでしょうか?

A13.普通のサングラスは鼻骨の土台の部分で支えますので、組織を移植する鼻骨上部には当たりません。メガネやサングラスをかけることで、移植した組織に影響がおよび、変形したり吸収されることはありません。

Q14.自己組織はプロテーゼと異なり一生もつのでしょうか?歳を重ねるごとに不自然に変形したり問題が出てくることはないのでしょうか?

A14.自己組織は完全に自分の鼻と一体化しますのでほぼ一生ものです。ただし、ごくまれに長年経過した後、鼻先に移植した軟骨の輪郭が浮き出てくる方がいらっしゃいます。その場合は軟骨の角を少し削れば治まります。

Q15.いつから日常で行うような鼻をかんだり鼻に触れたりすることが可能ですか?

A15.術後抜糸がすべて終了しましたら、鼻をかんだり、鼻に触れたり、日常の通り生活をすることは可能です。全顔の洗顔やメイクは、テープ固定を解除する3日後から可能です。

Q16.術後に横向きに寝ることで手術した部分に悪影響がありますか?

A16.術後、横向きに寝ることで問題はありませんが側頭筋膜を採った部分を下にしますと痛みがあると思います。

Q17.手術当日に用意しなければならない物品はありますか?

A17.手術当日に持参していただきたいものは、帽子です。頭から側頭筋膜をとりますので、その部分に、はちまきをまくように包帯を巻きます。この包帯を隠すために、深めにかぶれる大き目の帽子を用意してきてください。

松下洋二(医師)

鳥取大学医学部卒業後に京都大学医学部形成外科に入局。大学附属病院などで形成外科・美容外科で働いた後、2007年より五本木クリニックの美容診療部の部長に就任。

主に他院での鼻整形の失敗で悩む患者さんからの修正依頼に応えて続け20年以上経ちます。こんな私の強みは、施術後、時間が経つと一体どんな影響を及ぼしていくのか、その未来について予測ができること。医師としてこれまで患者さんと向き合ってきた経験を現場で活かすだけでなく、読者の皆さんにとって少しでも有益な情報になるよう情報発信に努めてまいります。

松下洋二(医師)への相談窓口

0120-70-5929

10:00~18:30※木・日•祝日は休診

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