平成元年に医学部を卒業し、医師となってから、はやいもので、今年でもう28年が経とうとしています。
私の専門は形成外科
私の専門は形成外科 (けいせいげか) という外科系の一分野なのですが、一般にあまりなじみがなく、よく整形外科 (せいけいげか) と間違われます。
整形外科は骨や関節、筋肉などの運動に関わる部位のケガや病気を治療する外科です。これに対し形成外科は、生まれながらの異常や、病気やケガなどによってできた身体の表面上の見栄えのよくない状態を改善する外科なのです。
形成外科って具体的に何をするの?
例えば、生まれつき上くちびるや上あごが裂けている(口唇裂、口蓋裂)、生まれつき耳が小さい(小耳症)、生まれつき指がくっついていたり、指の数が多い(合指症、多指症)など、顔や手指の生まれつきの異常に対する形成手術、やけどの後のケロイドやひきつれの治療、ケガの後の顔の変形や傷跡の治療、乳がんで切除された乳房の再建など、形成外科の守備範囲は多岐にわたります。
美容外科医として
京都大学病院やその関連病院でこれらの形成外科の経験をみっちり積んだ後、私はかねてより興味のあった美容外科の道に進みました。 外見上の悩みで心に傷を負った方を、外科的に治療し、一人でも多くの方のコンプレックスを解消してあげたいという信念のもとに意気揚々と美容外科医としてスタートをきったのですが、世の中そんなに甘くはありませんでした。
抱えたジレンマ
小柄な日本人の美容整形は、少ないボリュームを補うために、鼻にしろ、胸にしろ、シリコンプロテーゼという異物を使って、高さや大きさを出すことが多いのですが、手術後しばらくはとてもきれいに仕上がります。
しかし、年数が経つにつれ、異物がずれたり、変形したり、皮膚が薄くなったり、変色したりと、いろいろな不具合が生じてくるのです。特に鼻は顔の中心にあり、一番目につく部位なので、整形後にトラブルが生じた場合の患者さんの心労といったらたいへんなものです。
きれいになるために、手術をしたはずなのに、入れた異物が原因で新たな悩みやコンプレックスが生じてしまうというジレンマに、私自身も悩まされることになりました。
自分がすべきことがわかった
もともと体内には存在しない異物を入れることの不自然さ、身体への負担のことを考えると、異物は使わず、自分の組織のみできれいな鼻を形成することはできないのか?いろいろ試行錯誤を繰り返し、ようやく自信をもっておススメできる鼻の修正方法を確立することができたのです。
それが、自家組織移植法という、まさに形成外科の基本中の基本になる治療法を応用したものです。
とはいっても、鼻を初めて整形する場合のベストの方法はやはりシリコンプロテーゼです。形が作りやすく、鼻以外の部位にメスを入れる必要もなく、いざとなれば簡単に抜くこともできます。
ただし一生は持ちません。このことをちゃんと説明せずに初回の手術を行う医師が多いため、後になって苦しんでいる患者さんがたくさんいらっしゃいます。
異物を入れた後、起こり得る可能性をすべて説明し、いずれは異物を抜いて自己組織に入れ替える手術が必要になることを最初の手術の時に十分納得した上でおこなうことが重要です。そして、異物を入れている間は、一年に一回程度でいいので、定期的に異常がないか担当医が責任をもってチェックするべきです。
異物を入れているのがそろそろ限界になってきたら、すみやかに自己組織に入れ替えることを提案します。ただ、シリコンプロテーゼを入れているクリニックがすべて自己組織による高度な修正手術ができるわけではないので、その必要が出てきたら、当院のようにそれを専門に行っているクリニックで治療を引き継ぐことになります。このような流れがベストですね。
このように、私は20年以上に渡り、鼻の修正手術をライフワークとしておこなってきましたが、いろいろな症例を重ねていくうちに気付けば1000例を超える数になっていました。
これを機会に、鼻のことでいろいろな悩みのある方の参考になればと思い、鼻の美容外科手術について、私の経験に基づいた情報をざっくばらんに公開したいと思い、今回ブログを始めることにしました。
難解な医学用語はできるだけ避け、どなたが読んでもわかりやすく簡単明瞭に書いていくことを心がけたいと思っています。また、時にはなんの関係もない、個人的な趣向に偏った文章を書くこともあるかと思いますが、それはご愛嬌ということで!
日々診療に追われる毎日で、頻繁に更新するのは難しそうですが、時間が許す限り、極力続けて書いていきたいと思いますのでよろしくお願いいたします。