前回のブログ記事「鼻のプロテーゼを抜き続けて20年、そこから見えてきたもの(その1)」ではピンポイントでL型プロテーゼの問題点を述べさせていただきました。
今回はプロテーゼを入れたことで後悔する人は、具体的にどんな悩みを抱えているのかを紹介いたします。
他院で行った鼻整形の修正手術を専門的に行うのが五本木クリニック
五本木クリニックの美容外科では、鼻の修正手術を専門的に行っていまして「プロテーゼを抜きたい❗」と強く希望される患者さんが後を絶ちません。
抜きたくなる理由として、プロテーゼがずれて鼻すじが曲がってしまっているとか、皮膚が赤く変色しているといった見た目の明らかな異常が多いわけですが、実は、それ以上に多い悩みがあるのです。
それは鼻すじの不自然なテカリです。
次の写真をご覧ください。
一見したところ、形も整っていて、誰が見てもわかるような大きな異常はありません。
しかし、よくよく話を聞いてみると、写真を撮った時に、鼻だけが異常に光って目立つとか、特殊な色の光や照明で鼻すじが浮いたように見えてしまい、それが気になって仕方がないという切実な悩みを抱えているのです。
鼻プロテーゼってなんで不自然にテカるの?
このような鼻の不自然さはどこから生まれるものでしょうか?
本来鼻すじを構成する要素は下の図のように三つのパーツからできています。
上三分の一は鼻骨 (びこつ) 、真ん中三分の一は外側鼻軟骨 (がいそくびなんこつ) 、下三分の一は鼻翼軟骨 (びよくなんこつ) です。上三分の一は硬い骨でできていますからこの部分は動きません。しかし、下三分の二はやわらかい軟骨でできていますので、鼻先をつまんで左右に動かすと自由に動かせますし、下あごを左右に動かすとか、鼻の周りやほほの表情筋を動かすとそれに連動して鼻先が微妙に左右上下に動くのが自然です。
ところが、鼻すじ全体に棒状のプロテーゼを入れると、それが足かせになり表情による自然な動きが制限され、鼻全体が凍り付いたように固まってしまいます。さらにプロテーゼに圧迫された皮膚が年数の経過とともにどんどん薄くなると、皮膚がツンツンにつっぱり鼻すじが不自然にテカったり、プロテーゼの輪郭が浮き出てきたりするようになるのです。
L型プロテーゼや大きすぎるプロテーゼ、硬いプロテーゼを入れた場合、また、生まれつき皮膚の薄い方などは、特にこのような症状が出やすいので要注意ですね。
このような不自然なテカリは、自家組織移植法により解決できます。
この症例は、テカリの原因になっていた硬いプロテーゼを抜き、薄くなった皮膚の厚さを補うために筋膜移植を行った例です。術前の不自然なテカリがとれて、とてもナチュラルな鼻すじになっているのがよくわかると思います。
せっかく入れたプロテーゼを抜きたくなる理由とは?
プロテーゼを抜きに来院される方の鼻の状態は百人百様ですし、抜きたい理由もみなさんそれぞれ異なります。何らかの事情で後悔している人が大半とはいえ、単純に形状を変えたいといった理由の人もいます。
私が診てきた患者さんのデータをふまえ、プロテーゼを抜きたくなる理由を原因別に分類して紹介しますね。
プロテーゼ自体になんらかの不具合がある方
- プロテーゼがおでこの方にずれていって、ブタ鼻のようになってきたので抜きたい。
- プロテーゼの上端がグラグラ動いて気持ち悪いので抜きたい。
- 口を開けるたびに、鼻のなかでプロテーゼがカクカクと音をたてるのが不気味なので抜きたい。
- スポーツ中にボールが鼻に当たり、プロテーゼがずれてしまったので抜きたい。
皮膚に異常がでてきた方
- 冬になるときまって鼻先が赤くなるので抜きたい。
- 鼻先が白く変色し、まるくプロテーゼの輪郭が浮き出てきたので抜きたい。
- 鼻すじが凸凹になってきて、触るとしこりのようなものを触れるので抜きたい。
違和感や異物感が気になる方
- 鼻の部分がいつも重く、圧迫されているような感じで、違和感、異物感がずっととれず、頭痛まで起こるようになってきたので抜きたい。
- 眉を上下に動かすと鼻根部に違和感があり、気になってしょうがないので抜きたい。
不自然さが気になる方
- 70歳を過ぎて、顔じゅうシワだらけなのに、鼻の部分だけやけにつるっとしていてシワがなく不自然なので抜きたい。
- 笑った時に鼻先がとがったように見えて不自然なので抜きたい。
- 鼻すじがあまりにも直線的に見えて不自然なので抜きたい。
- ダイエットをして痩せたら鼻ばかりが目立つようになって不自然なので抜きたい。
異物を入れていることによる不安感が強い方
- プロテーゼを入れる時に、リスクについて全く聞いてなかったので、永久的なものだと思っていたが、最近、ネットで美容整形のサイトをみていたら、プロテーゼが突き出てくるという人が多く、怖くなってきたので抜きたい。
- 花粉症になってしまい、鼻をかんだり、触ることが多くなり、プロテーゼに影響するのではないか心配なので抜きたい。
- 友人が交通事故で鼻をケガした時に、プロテーゼが傷口から飛び出てきた話を聞いて怖くなったので抜きたい。
- プロテーゼのことが四六時中気になって、うつぶせで寝たり、鼻をかんだり、つまんだり、触ることさえできなくなってしまったのでいっそのこと抜きたい。
- 子供がまだ小さく、手加減なく鼻をぎゅうぎゅうつまんできたり、叩かれたり、ふざけて足が当たったりするたびに恐怖を感じるので抜きたい。
プロテーゼを入れていることを他人に知られたくない方
- レントゲンや、CTなどの検査をした時にプロテーゼが写るのではないか不安なので抜きたい。
- 彼氏に鼻を触られ、「整形した鼻みたいだね」と言われ、ばれるのが怖いので抜きたい。
- 近々結婚の予定だが、相手には鼻のプロテーゼのことは内緒にしているので、結婚前に抜いて自己組織に入れ替えたい。
- いつ死んでもおかしくない年齢になったので、死んだときにプロテーゼのことがばれないように今のうちに抜いておきたい。
プロテーゼを入れていることでやりたいことができない方
- エステなどでフェイシャルマッサージや美顔治療を受けたいのに、鼻のプロテーゼのことが気になって行けないのでいっそのこと抜いてしまいたい。
- バイクやスノボーがなによりの趣味であるが、鼻にプロテーゼを入れているので、けがが怖く、今まで我慢してきたが、この際思い切って異物を抜いて、自分のやりたいことを自由に謳歌したい。
プロテーゼを入れたことで精神的な問題が発生してしまった方
- 整形後、他人に自分の鼻のことをじろじろ見られているような気がして、人に会いたくない、外出したくない。
- 少しだけきれいになりたいと思って整形したのに、かえって元の鼻より醜くなったような気がして後悔と罪悪感にさいなまれている。
手軽で効率の良いプロテーゼは隆鼻術の第1選択肢。ただし将来抜かざるを得ない可能性もセットです
このように、実にいろいろな悩みを抱えている方がいらっしゃいます。
(1) のプロテーゼ自体になんらかの原因がある場合は、プロテーゼの入れ替えのみで自家組織移植は行わずに対応できる場合もありますが、異物を入れ続ける限りにおいては将来 (2) ~ (8) のような問題が生じてくる可能性がありますので、慎重に経過をみていく必要があります。
(2) ~ (7) の患者さんについては、異物を使っている限り解決しませんので、プロテーゼを抜いて自己組織に入れ替えることがベストの治療法ということになります。
深刻な精神的問題が生じている (8) のケースの場合は、すぐに手術で解決というわけにはいきません。メンタルの専門家と協力しながら慎重に手術の是非を検討し、手術の適応があれば手術時期や方法を注意深く選択しなければいけません。
プロテーゼによる不具合が発生した場合、それを治療(修正)するには鼻からプロテーゼを取り出す(抜去)しかありません。当然、抜いただけでは不自然になります。プロテーゼが入っていた時のような鼻にするには抜いた部分に代わりのもので補填する必要があります。プロテーゼの入れ替えを提案するクリニックが多いと思いますが、私はプロテーゼではなく自家組織移植による修正を行なっています。