美容領域の医学論文は基礎研究よりも症例報告が多く、これは医学的なエビデンスとしては弱いのです。一方で広告に躍起になるあまりに誇大広告的なものが目立ちます。
ここ最近では「幹細胞」がトレンド。誰もが知っているような一般的なワード・興味を持ちそうな文言で注目を集めている幹細胞ですが、どう見ても医学的には幹細胞じゃないんですけどね。
五本木クリニックはマジメに再生医療による皮膚のエイジングケアを目指しています。厚生労働省へも第三種再生医療等・治療に関する提供計画を提出しています。
再生医療のひとつ【多血小板血漿 (PRP) 療法】でエイジングケア
五本木クリニックが厚生労働省に提出している再生医療は「多た血小板けっしょうばん血漿けっしょうを用いた再生医療(皮膚および皮下組織)」で一般的にはPRP (Platelet Rich Plasm) 療法と呼ばれています。
このPRP療法はスポーツ選手の関節のトラブルの治療ではかなりの歴史と実績があります。最近では大谷翔平投手が受けたPRP注射が話題になりました。
でも、アカデミックな論文が少ない美容医療系でのPRP治療は
「美肌効果って本当にあるの?」
「PRPを試してみたいけど副作用が心配❗」
「美容クリニックって信用できない」
などのご意見もあるようです。
PRPを試してみたいけど色々と心配という方はご安心ください、前者二つの心配は必要ありません、最後の心配は当院は関知する案件ではございません(笑)。
多血小板血漿(PRP)を用いた再生医療の臨床的な有効性を示した医学論文
Rejuvenation Research (日本語だと「若返り研究」まんまの題名)の医学専門誌があります。若返りという表現はWebサイト上では使ってはいけないとされていますが、この論文のタイトルなのでご容赦くださいね。
この専門誌の評価の目安であるインパクトファクターは3.220で超一流専門誌の足元には及びませんが、日本の医学系学会誌とは同等の評価です。この若返り、じゃなかったRejuvenation Researchにこんな研究論文が掲載されています。
The Clinical Efficacy of Autologous Platelet-Rich Plasma Combined with Ultra-Pulsed Fractional CO2 Laser Therapy for Facial RejuvenationPMID: 27222038
⋯ざっくり訳すと顔の若返りにPRPとフラクショナルレーザーを組み合わせました❗
という顔を若返らせるエイジングケア治療の一つとして、再生医療の一つであるPRPとフラクショナルレーザーを組み合わせて、その効果を評価した医学論文です(インパクトファクター3.220であることに注目をw)。
この論文の中で、PRP&フラクショナルレーザーによる効果を示すビフォーアフター写真が掲載されています。
もちろん向かって左が治療前で、右が治療後(3か月後)です。
写真の画像の明るさは若干違っているとはいえ、少なくとも目の下と目尻のシワは薄くなっていることがわかります(写真に対する問題点は論文の著者へお願いします)。
肌のシワ・キメ・弾力の3項目における患者さんの満足度はこんな感じになっています。
フラクショナルレーザー単独でも皮膚のエイジングケアは可能です。しかし、PRPと組み合わせた方がシワ・肌質・肌のハリに対する効果の満足度が高いことがわかります。
当院でPRPによる肌再生治療を予定している方はせっかく治療したのに、全然効果ないじゃない❗という方も若干いらっしゃる点だけは、ご注意いただけると幸いに存じます(苦笑)。
PRPの効果を他覚的・客観的に判断した結果はこれ❗
さて、お客様満足度調査業界ナンバーワン、との宣伝って皆さんは心から信用していますか?
なんらかの消費行動をする上で重要なのはお客様満足度や根拠なきマウンティング的な広告ではなく、他覚的というか客観的な事実に基づいたファクト❗
そこでこの論文ではPRPの効果を判定するために2人の皮膚科医に二重盲検法で評価してもらっています。さらにVISIAと呼ばれる皮膚の解析装置を使用してスコアを出しています。VISIAは医療や美容のテレビ番組で見たことある方も多いでしょう。
その結果がこれ❗
このグラフは点数が少ないほど皮膚は良い状態であることのご注意くださいね。
レーザーとPRPを組み合わせた治療の方が効果が高かった❗との驚くべき??結果になったのです。ここから当クリニックでPRP治療やレーザー治療を予定している方はしっかりお読みください。
No other side effects such as petechia, pigmentation, effusion, infection, keloid, blisters, and contact dermatitis were found after treatment.
日本語にすると治療によって出血・色素沈着・ケロイドなどの副作用はありませんでした❗って結果でもあったのです。
美容、特にエイジングケア系のエビデンスの提示は難しいです
治療効果を明確に証明することは非常に重要なことであり、治療の効果だけではなく副作用等も症例報告レベルではないものがあるに越したことではありません。
しかし、美容整形の場合はどうでしょう?
例えば鼻にプロテーゼを入れて鼻を高くしたり鼻筋をスッキリさせる治療の効果は⋯術前・術後の写真を提示するのが一番のエビデンスになると思います。
もちろんその後の副作用やトラブルを集積して報告する医学論文があっても良さそうなのですが、フォローアップが難しい場合が多く統計学的なデータを明確に提示した論文は私が調べた限りでは見つかりません。
再生医療という分野における多血小板血漿を用いた治療は整形外科特にスポーツ診療で大学病院でも本格的に使われている治療方法です。参考→ 順天堂大学医学部附属順天堂医院「多血小板血漿(PRP)による治療について」
多血小板血漿(PRP)を使用した再生医療は厚生労働省に届け出る手間暇はかかりますが、基礎的な研究も以前から多く報告されていて安全性と効果に関しては必要以上の心配をすることはありません。
前の方で述べさせていたいだきましたが残るは「美容クリニックって信用できない」問題だけです。肌の再生治療を予定している方はくれぐれも治療するクリニック選びには慎重にご検討くださいませ。