患者さんが「シミを取って欲しいのですけど」と来院しても、医師が考えるシミではないことはありがちな話です。「先生、この黒子をレーザーで取って❗」とおっしゃってもそれが黒子では無いこともあるあるです。
世の中には市販薬でシミを消すと効果効能をうたっている飲み薬や塗り薬がありますが、ご自分の判断で長期間使用しても全く効果がでないことも稀ではありません。一応、病気の診断って医師だけに許されているものですし、誰もが正確に自己判断できたら医師はいらないってなっちゃいます。
とはいえ、病院にいくのは面倒だしお金もかかるしということでコスパを考えて美容皮膚科でレーザー治療より安いと自己判断してしまいがちです。
シミといっても実は多数の病態がありまして⋯レーザーじゃないと消せないもの代表例はこれ❗
自己判断のせいで逆にお金と時間の無駄となってしまう可能性が高いシミがあります。その代表がゼボケラと呼ばれる脂漏性角化症です。脂漏性角化症は一見シミのようにも見えますし、黒子のようにも見えます。
これは肩周辺にできた脂漏性角化症⋯老化と紫外線の影響が大きいようです。
この脂漏性角化症は塗り薬や飲み薬で解消することはまず時間とお金の無駄になると考えていただいて間違いありません。レーザー治療だと初期コストはそれなりに掛かりますが、効果は治療後すぐに確認できますし、その後のメインテナンスも簡単です。
脂漏性角化症というシミは「お迎えボクロ」なんて呼び方もありまして⋯
脂漏性角化症は英語で「seborrheic keratosis」と呼び、私たち医師は略して「ゼボケラ」と言うことが多いです。シミとか黒子とか一般の方は考える皮膚の病変ですが、以前映画かドラマで森繁久弥さんだったかなあ「このこめかみのあたりに黒子ができてきて」と娘か奥さんに言うと「それってお迎えボクロですよ」と返される場面がありました。
そうなんです
この脂漏性角化症の原因は老化❗であり加齢に伴ってできてしまいます
ご自分の顔を鏡に映して直視しても見落とす場合もあります。この脂漏性角化症のできやすい部分はフェイスラインであり、特にこめかみ付近にできやすいようです(おでこや中には頭部にできちゃう人もいます)。この脂漏性角化症は年寄りじみて見えますし、なんとなーくご自分でも汚らしいと感じている方が多いためか、当院の場合
男性がレーザーでシミ治療を望まれる場合に一番多い皮膚の病変です
この脂漏性角化症を市販薬で長期に渡って自分で消そうと考えても、まず間違いなく効果を期待することは不可能と考えます。先ほどものべましたが、結局のところ時間とお金の無駄になってしまうことが多いのです。
市販のシミを消すと称する飲み薬や塗り薬では脂漏性角化症を消すことができないワケ
シミを消すことができる市販薬として飲み薬のハイチオールCと塗り薬のケシミンが代表的だと考えます。ハイチオールCの効果効能を見てみましょう。ハイチオールCプラスと言う飲み薬(エスエス製薬)はこんな感じの説明になっています。
ハイチオールCプラスはシミの原因であるメラニンの過剰な生成を抑制・無色化し、肌の代謝 (ターンオーバー) を助けて過剰にできたメラニンを排出します。肌の代謝の正常化により、ニキビにも効果を発揮します。
シミの原因であるメラニンが作られることを抑制する⋯ってことはできちゃったシミは消えないの?
こんな素朴な疑問が出てきませんか?ハイチオールCプラスの有効成分であるL-システインは確かにシミの色を構成しているメラニン(黒色)をドーパキノンに変化させて色を薄くすることは理論上あります。
しかし、脂漏性角化症は黒い色プラス皮膚の盛り上がりがあるのでもしも黒い色が消えたとしても(可能性はかなり低い)皮膚の盛り上がりは解消できるとは思えません。そういえば脂漏性角化症を老人性のイボと表現する人もいます。イボって一般的に皮膚が隆起している状態を表しますよねえ。つまり、万が一黒い色がハイチオール系の飲み薬で消すことが可能だとしても盛り上がりは解消できない⋯シミを消す代表的な飲み薬であるハイチオールで脂漏性角化症の治療は不可能と考えて差し支えないはずです。
ではシミを消すとされる塗り薬のケシミン(小林製薬)の場合は果たして脂漏性角化症に効果が期待できるのでしょうか?
あったらいいなの小林製薬のケシミンクリームの効果効能としてこのように書かれています。
メラニンの生成を抑え、しみ、そばかすを防ぐ。肌あれ。あれ性。あせも・しもやけ・ひび・あかぎれ・にきびを防ぐ。皮ふをすこやかに保つ。肌を整える。皮ふにうるおいを与える。日やけ・雪やけ後のほてりを防ぐ。肌をひきしめる。
ケシミンクリーム 小林製薬
あれあれ〜、しみやそばかすを防ぐ→できちゃたものを消す効果はないじゃん❗
残念ながらできてしまったシミにも効果は無いの的な驚き、CMでは出来てしまったシミが消えているように見せていると感じてしまったのは自分だけでしょうか?こうなると当然、皮膚が老化によって盛り上がりさらに黒くなってしまっている脂漏性角化症に効果があるとは思えません。
脂漏性角化症に対してハイチオールCであろうと、ケシミンクリームであろうと効果は期待薄❗
ってことなんです。
脂漏性角化症のレーザー治療の方が簡単で結局のところお得なワケはこれね
いわゆるシミは盛り上がっていません⋯医学的には老人性色素斑と呼びますが、30才台でもしばしば見受けられますので「老人性」は省いて「色素斑」と私たちは呼びます(笑)。このシミに対しての治療はQスイッチヤグレーザーやIPLと呼ばれる光を用いた治療法を選択しつつ、予防的にハイチオール系の飲み薬やハイドロキノンと呼ばれる塗り薬を併用することが多いですし、日頃からの紫外線対策もマストでありどちらかと言うとメインテナンスが面倒に感じられる方も多いのが事実です。
しかし、盛り上がったシミである脂漏性角化症は炭酸ガスレーザー(CO2レーザー)と言う非常に単純明快なレーザーの治療によってその場でシミが取れた状態を確認することができ、メインテナンスも色素斑と比較して楽チンです。
この脂漏性角化症に対して液体窒素で治療を試みる医療機関もあるようですが⋯液体窒素治療だと治療が不必要な正常な皮膚に対してのダメージがあり、その後外傷性皮膚色素沈着になってしまうという大問題があるために、あまりオススメできる治療ではありません。脂漏性角化症を気にしている方はハイチオールCやケシミンクリームの効果効能をよく読みましょうね❗どう見てもこれで脂漏性角化症を治療することは不可能に近いことを感じていただけると思います。
最初、市販薬とレーザー治療のコスパについてブログを書こうと思ったのですが、コスパも何もあったものじゃないです⋯だってそもそも市販薬では効果が無いのですから。