笑ったときに歯茎が出てしまうことは子供の頃は全く気にしていなくても、大人になるにつれて気になってしまうもの。
いつの間にか思い切り笑うことができなくなってしまった、感情を表現することを抑えてしまって人から勘違いされがち、このような悩みの方は多いでしょう。
ガミースマイルの治療で、歯や歯茎、骨を削って治す方法がありますが、それだと顔が変わってしまいます。失敗したくない、笑うときだけ歯茎が出ないようにしたい、切らずに治したい方にはボトックス治療がオススメだよ、というブログ記事です。
実際の症例写真とあわせて紹介しますね。
気にしている方が意外と多い笑った時にでてしまう歯茎問題
美容用語でガミースマイルと呼ばれる症状があります。ガミースマイルは英語だとgummy smileなのですが、恥ずかしながら私はこの意味を大勘違いしていました。
子供が「ガミースマイルって何?」と突然食事中に尋ねられました。私は「あのね〜、まずは自分で調べないよ」と言いそうになったのですが、「ああ、ガミースマイルね。あれって昔、海外のTVドラマかアニメにでてくるガミーって名前の動物のキャラから付けられた俗語で、笑ったり喋ったりしたときに上唇がそりかえることなんだよ」と答えました。
食後「パパ〜!ガミースマイルって歯茎のgumが語源なんじゃない」と言われて、慌ててガミースマイルに関してPCで検索したのですが⋯すいません、私のガミーというキャラの名前説は完璧に妄想でした、記憶違いでした、大間違いでした。
ガミースマイルの定義は美容的というか審美的には上唇挙上筋が必要以上に強く働くことによって、歯茎が過度に露出する状態を表す用語なんです。
このガミースマイル、検索してみると審美歯科領域でも広く治療が行われているようです。ガミースマイルの治療に関して美容医療的アプローチで少々解説を試みますね(家庭内の記憶違い発言、かなりショックで勉強をし直すつもりです)。
笑った時に、上唇が丸まり込んで歯茎が見えてしまうことをご本人は気にしています。
横から見た状態です。歯茎が見える状態、第三者が考えている以上にご本人にとってはコンプレックスになっています。文献によってばらつきがありますが、ガミースマイルになってしまう人の割合は10%程度と考えられえています。
ガミースマイルで悩んでいる方は予想以上に多く、世界中にいることをネットで知りました
私はガミースマイルって俗語でしょう的解釈をしていたのですが、世界中の医学系論文の検索サイトであるpubmedで「gummy smile」のキーワードで検索していみると、出てくる出てくるガミースマイル関連論文。思えば日本のマスク文化が海外でありえないとバカにされてたのは、海外では口元が重要だからです。日本人なら目元ですね。歯並びとかに対する意識が高い、よって論文もたくさんあるということでしょう。
数あるガミースマイル論文の中から、1997年に書かれた「The diagnosis and treatment of the gummy smile.」[1](PMID: 9533335)ではガミースマイルの診断方法と治療方法が書かれています。
この治療は歯周病専門医の手によるもので、よるもので、「可能な限り最も美しい笑顔を提供する」と書かれています。
この論文によりますとガミースマイルは以下のように定義されています。
ガミースマイルの定義
The diagnosis and treatment of the gummy smile.
- 笑った時に3ミリ以上歯茎が見える
そして、なぜガミースマイルになってしまうのか?という原因については以下のとおりです。
ガミースマイルの原因
The diagnosis and treatment of the gummy smile.
- 上の前歯の突出
- 上の歯茎の突出
- 過剰な唇の動きと短い唇
- 縦方向に上顎が長い
- 本来なら長方形の歯が正方形に成長する
このようにガミースマイルには多くの原因があることが記載されています。
これは歯科領域でのガミースマイルの捉え方と思われます。
美容外科あるいは美容皮膚科的なガミースマイルの定義と治療方法を調べてみることにしました。
ボトックスを使えばガミースマイルは簡単に治療できてしまう
美容皮膚科的なガミースマイルの治療方法を述べた医学論文がありました。「Management ofgummy smile with Botulinum Toxin Type-A: A case report」[2](PMID: 24653614)によればガミースマイルはボトックスを使用することで治療できるようです。
この患者さんはは笑ったときに歯茎が過度に露出することを主訴としてインドの医療機関を受診しています。
これが治療前の画像。笑うと歯茎が4−5ミリ露出しています。
さらに意識して笑うと歯茎は8−10ミリ露出します。
上唇挙上筋が過剰に動くことが原因でガミースマイルになってしまっていると診断されたために、治療として左右の上唇鼻翼挙筋、上唇挙筋、小頬骨筋、大頬骨筋、笑筋にボトックスを注入しています。
その結果がこれです↓
ええっと、そんなに変わったかなあ⋯。
ガミースマイルを切らずに治すにはコツと経験が必要です
ガミースマイルのボトックスによる治療、めちゃくちゃ効果あるとは思えないので、当院の美容部担当の女性医師に「うちって、ガミースマイルって治療してたっけ?」と尋ねたら「やってますよ〜❗」と軽い返事。
「いまさあ、ガミースマイル関連の治療を調べていたら、なんだか効果はいまいちなんだようねえ」と伝えると「あっ、それたぶん、口輪筋が丸まってしまうことが原因の人もいるからなんじゃないですかあ⋯」との回答。
あっ、たしかにこのインドの症例は口輪筋にはボトックスは注射していませんね。当院の美容部担当の女医が非常に頼もしく感じられました。
そこでトップ画像の方にモニターとなってもらい、ボトックスでガミースマイルを直すことができるのか、目の前で当院美容部の女性医師の腕前を披露してもらいました。
左右に三ヶ所ずつ、ボトックスを注入するポイントをピオクタニンペンと呼ばれる目印用のマーカーで付けます(これは後でアルコールを使って拭き取ることができます)。
各部位にボトックスを刺していきます。30Gと呼ばれる極細針を使っていますので麻酔は必要としません。
これは上唇鼻翼挙筋へボトックスを注入しているところです。モニターさんは笑っていました。
論文の症例ではボトックスを注入していなかった口輪筋へ、ボトックスを注入。これによって、上唇が内側に巻き込むことを防ぎます。
治療に要する時間は5分程度、ボトックスを打つ前に様々な表情をしてもらい、どの筋肉の緊張をゆるめればガミースマイルが改善できるかを調べてマーキングするのに5分程度。合計10分で治療は完了します。
これが4日後の結果です。
思いっきり笑ってもらっても歯茎は見えません。
横から見ても歯茎は見えませんね。本人によれば皮下出血も痛みも感じることも無かったとのこと。
なんとなーく、口元に力が入らない感はあっても、飲食で困るようなことも無く、非常に満足している、と話してくれました。
スキルの低い経験が浅い医師の場合、ついついボトックスの量を多めに使用してしまう傾向があり、仕上がりが不自然になるので注意が必要です。持続期間は個人差があり、3ヶ月から半年が経験上は一般的と、治療した女性医師は説明していました。
まあ、ほかにもボトックスをつかってガミースマイルを改善した症例報告はいくつかあるので、美容皮膚科ではなく、美容外科的なガミースマイルの治療方法を捜索しました。
美容外科の手術でもガミースマイル治療は可能だけど⋯
ボトックスを使用した場合、年に数回は追加治療が必要なだから、手術しちゃえっ❗って方もいらしゃると思います。
「ガミースマイルの治療:上唇と鼻翼の昇降筋を封じ込めた歯肉再生術 手術の革新的な技術」という論文を見つけました。(Treatment of gummy smile: Gingival recontouring with the containment of the elevator muscle of the upper lip and wing of nose. A surgery innovation technique [3] PMID: 25425832)
この論文では、手術によってガミースマイルを治療するテクニックを報告していますが⋯かなりグロいというか、かなり過激な手術なので、ご興味のある方はご自分でアクセスしてご覧ください。
手術は、根本的に解決する治療ですが多くの方が失敗を恐れていると思います。自然な笑顔になりたいだけなのに、普段の顔が大きく変わってしまうのは避けたいはず。五本木クリニックではガミースマイルの美容皮膚科的治療、つまりボトックスを使った治療は行っていますが、美容外科的な、つまり手術による治療は行っておりません。
しかし、なんでガミースマイルのガミーって動物の名前だと記憶しちゃっていたのか、気になって気になって。
人間が問題を出すと、蹄を叩く回数で答えた「Clever Hans」、日本では「りこうなハンス」とよんでいる19世紀のヨーロッパに実在した馬の話と混同していたっぽいです。外出自粛期間があまりにも長くてやることないので屋根裏を掃除した時に見つけた世界のトンデモ話を集めた本の影響かなぁ。
引用文献
- Levine RA, McGuire M. The diagnosis and treatment of the gummy smile. Compend Contin Educ Dent. 1997 Aug;18(8):757-62, 764; quiz 766. PMID: 9533335.
- Dinker S, Anitha A, Sorake A, Kumar K. Management of gummy smile with Botulinum Toxin Type-A: A case report. J Int Oral Health. 2014 Feb;6(1):111-5. Epub 2014 Feb 26. PMID: 24653614; PMCID: PMC3959148.
- Storrer CL, Valverde FK, Santos FR, Deliberador TM. Treatment of gummy smile: Gingival recontouring with the containment of the elevator muscle of the upper lip and wing of nose. A surgery innovation technique. J Indian Soc Periodontol. 2014 Sep;18(5):656-60. doi: 10.4103/0972-124X.142468. PMID: 25425832; PMCID: PMC4239760.