プロテーゼを抜かずに自家組織移植を行った結果、失敗だったという事例

鼻整形

鼻プロテーゼの上に自家組織移植した失敗例を修正治療

鼻プロテーゼが原因のトラブルに対しては、プロテーゼを抜かない限り問題は解決しません。

悪い結果には必ず原因があります。その原因を解決せずに別の方法でよい結果を得ようとしても、もとの原因はそのままですので、より悪い結果になることも。

鼻プロテーゼによるトラブルでしたら、プロテーゼを抜かないと駄目です。とはいえプロテーゼを入れたクリニックに相談したらプロテーゼを抜かずに自己組織の移植を行うことを勧められ、結果失敗ということは珍しくありません。実例を紹介いたします。

15年前にL型プロテーゼを入れた30代女性Nさんのケース

30代の女性、Nさんは鼻が低いのがコンプレックスで、15年前に、某美容外科で鼻にL型のプロテーゼを入れる手術を受けました。

年数がたつにつれてプロテーゼがおでこのほうにずれ、それに引っぱられて、鼻先が上に向き、ブタ鼻のようになってしまいました。

そこで、1年半前にプロテーゼを抜いてもらおうと、別のクリニックに相談に行きました。テレビで派手に宣伝をしている有名な美容外科クリニックです。

鼻に入れたプロテーゼが原因で起きているトラブルを解決するには、根本原因のプロテーゼを抜くのが当たり前なのですが、このクリニックの担当医師はどういうわけか、プロテーゼはそのまま残し、鼻先に耳の軟骨を移植して鼻先を下げる方法を選択したそうです。

わかりやすく例えるならば、「虫歯で穴が開いてしまった歯に対し、虫歯部分を取り除かず、そのまま上からフタをしただけ」です。

これはあり得ない治療法です。

案の定、1年ほどたつと、鼻先に移植した軟骨の輪郭がほんのり浮き出てくるようになり、さらに鼻先の皮膚も白く変色してきました。

そこで、鼻の修正手術を専門的に行っている当院を受診されたわけです。

鼻先に移植した軟骨が、L型プロテーゼの角の部分で押しだされてしまっている状態

Nさんの問題点は、上の図のように、鼻先に移植した軟骨が後ろから、L型プロテーゼの角の部分に押され続けたことが原因で発生しました。

つまり、L型プロテーゼと軟骨がダブルで皮膚を圧迫し続けたことにより、鼻先の皮膚がどんどん薄くなり、軟骨の白い色が透けて見え、また、軟骨の輪郭が浮き出てきたというわけです。

このまま放置すると、限りなく薄くなった鼻先の皮膚が破け、軟骨とプロテーゼが飛び出してくる危険性があります。

Nさんの治療経過

以下の2枚の写真は手術前のNさんの鼻の状態です。

他院でプロテーゼを残したまま自家組織移植した状態を修正する手術前の写真

正面の写真で、鼻先の部分に白く丸く移植軟骨が浮かび上がっているのがわかります。

鼻整形の修正手術前の写真の拡大写真

まず、L型のプロテーゼを抜き、鼻筋の部分に筋膜移植をおこないました。さらに、鼻先の軟骨はそのまま再利用しますが、軟骨の上を覆う皮膚がかなり薄くなっているので、その皮膚の厚みを補うために、鼻先の皮下にも筋膜移植をしました。

鼻から取り出したL型プロテーゼの実物写真

上の写真は抜去したL型プロテーゼです。

以下の2枚の写真は、術後6か月経過した鼻の状態です。

鼻の他院修正の手術の術後半年の写真

鼻先のトラブルが解消され、鼻の形も手術前とほぼ同じ形でそのままキープされています。

自家組織を採取後の側頭部の写真

筋膜は側頭部からとっていますが、その傷跡も髪の毛の中に隠れ、上の写真のように髪の毛をかき分けてもほとんど跡がわかりません。

鼻プロテーゼによるトラブルが発生した場合は、修正専門のクリニックに相談するのがベスト

平成28年に厚生労働省から発表された医療施設調査報告によると、日本国内で美容外科を標榜している施設は124あります。

そのほとんどの施設で、鼻にプロテーゼを埋め込む手術がおこなわれていますが、入れたプロテーゼによりなんらかのトラブルが発生した場合に、的確な治療ができる施設はほとんどありません。

トラブルを悪化させないためのチェックポイント

不具合が発生したときに、まずはプロテーゼを入れたクリニックに行って相談する人が多いと思いますが、その際に、以下のような方法を勧められたときは要注意ですので、言いなりにならず、当院のような鼻修正専門クリニックにご相談ください。

  1. プロテーゼが原因ではないといって取り合ってもらえない
  2. プロテーゼはそのままにして、追加でほかの手術を勧められる
  3. プロテーゼをいったん抜いて、同じプロテーゼを少し細工して再利用する方法を勧められる
  4. プロテーゼを抜いて別のプロテーゼに入れ替える方法を勧められる
  5. まずはプロテーゼを抜くだけ抜いて様子を見るように勧められる

まず、①については論外ですね。鼻に異物(プロテーゼ)を入れたからには、将来起こる可能性のあるトラブルについて説明し、定期的なチェックを欠かさないことが重要です。少しでもなにか異変があればプロテーゼの原因によるものかどうかをくわしく診察し、最善の治療法を選択するのが異物を入れた担当医のつとめです。

②についても論外です。原因となっているプロテーゼには手を付けず、さらに別の手術をすすめるとは、何の解決にもならないどころか、無駄な治療費だけがかかってしまうという最悪の方法です。

③、④については、プロテーゼのような異物によって起こっているトラブルの解決法として、同じ異物(プロテーゼ)を用いる方法では根本治療にならないのは素人でもわかることです。

⑤については、条件によっては可能な場合がありますが、5年以上プロテーゼが入っている方は、抜くだけでは元の鼻に戻らないことが多く、代わりに自己組織を入れて形を整えないと、鼻の形がくずれてしまう危険性があります。

何年も異物が入っていると、周りの組織を圧迫して皮膚や皮下脂肪の一部が溶けて限りなく薄くなり、軟骨や骨が変形してしまうこともあり、もともとの自分の鼻は原形をとどめていないのです。

ですから、プロテーゼを抜いただけで元の鼻に戻れるわけではなく、組織が溶けた部分はへこんでしまい、変形した骨組みの軟骨が不自然な輪郭に浮き出たりして、まったく別物の鼻になってしまうのです。

プロテーゼによるトラブルが起きた場合に、まずはプロテーゼを抜いて様子をみてみましょうと言われ、異物を取るのはいいのですが、抜いた後、鼻が変形してしまい、そのままの状態で次の手術まで待たなければならないのは患者さんにとってとても苦痛です。

また、その状態で時間が経過すると、鼻が変形した状態で完全に固まってしまい、修正する場合に、とても手術がやりにくく、良い結果も出にくくなります。

そうならないように、当院ではプロテーゼを抜くと同時に自家組織移植もおこない鼻の形が変形しないようにきれいに形成する同時再建法を積極的におこなっています。

この方法だと、手術は1回ですみますし、鼻がへこんだり変形したりすることもなく、患者さんの精神的な負担も軽く済みます。

鼻プロテーゼによるトラブルが発生した場合、プロテーゼを入れたクリニックで適切な対処ができない時には、鼻の修正を専門に行っているクリニックに相談するのがベストです。

松下洋二(医師)

鳥取大学医学部卒業後に京都大学医学部形成外科に入局。大学附属病院などで形成外科・美容外科で働いた後、2007年より五本木クリニックの美容診療部の部長に就任。

主に他院での鼻整形の失敗で悩む患者さんからの修正依頼に応えて続け20年以上経ちます。こんな私の強みは、施術後、時間が経つと一体どんな影響を及ぼしていくのか、その未来について予測ができること。医師としてこれまで患者さんと向き合ってきた経験を現場で活かすだけでなく、読者の皆さんにとって少しでも有益な情報になるよう情報発信に努めてまいります。

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