スタイレージというヒアルロン酸を使った治療を実際に体験して、多くの種類があるスタイレージの効果的な使い方について考察しました。症例写真も紹介します。
スタイレージは、ヒアルロン酸の粒の大きさや架橋の違い、さらには麻酔剤が含まれているか否かによって13種類もあります。
「スタイレージ(STYLAGE)」は用途によって使い分けるヒアルロン酸です
美容皮膚科がかなり一般の方にも浸透してきました。美容外科との違いは切る、切らない、と考えてください。美容皮膚科の治療メニューの中でも、人気なのが「ヒアルロン酸の注入」です。プロっぽい人は、ヒアルロン酸注入を「フィラー」と呼んでいたりします。
五本木クリニックでは20年近く前からヒアルロン酸注入を美容皮膚科領域の主力として多くの経験を積んでいます。ところが、混乱が生じているのです。その理由はヒアルロン酸の種類が多すぎる❗のです。
私は専門とする一般診療の泌尿器科に力を注いで間に、当院で採用しているヒアルロン酸が10種類近くにもなっていました。厚生労働省が承認したアラガン社のジュビダームビスタシリーズと違って、海外から並行輸入というかたちで仕入れるので支払先が多数、DHLやFedExや関税の支払いとか回ってくる請求書を処理するのも一苦労になっています。
当院で一番使用されているのがフランスのVivacy Laboratoriesが製造している「Stylage®」です。
上から順にスタイレージXL、スタイレージM、スタイレージS、です。見た目はほとんど同じ。一本のシリンジ(注射器)に入っている量はスタイレージXLは1.0ml、スタイレージMも1.0ml、スタイレージSのみ0.8mlです。
私の事務処理を減らすことができるんじゃないかと、ちょっと不埒な考えも含めて、ヒアルロン酸の中でも美容担当医師にも患者さんにも評判の良い「スタイレージ」シリーズについて、多数用意しているヒアルロン酸の特徴を整理しつつ、体験してみました。
「スタイレージS」は目元など皮膚の薄い箇所に使用します
当院で用意しているスタイレージは「スタイレージS」「スタイレージM」「スタイレージXL」です。このスタイレージはさらに種類がありまして、全13種類なんです。
スタイレージはわかりやすく言えば、ヒアルロン酸の粒の大きさや架橋の違い、さらには麻酔剤が含まれているか否かによって13種類にもなっています。
まあ、治療する医師の好みもあるようで、当院としては3種類に絞っています(絞っているはずなんだけど、ほかのスタイレージも見かけたような⋯)。
スタイレージSの特徴はヒアルロン酸の粒が小さいので、目の周囲などの皮膚が薄い部位に適しています。
ここにスタイレージSを添付されている尖った針ではなく、先端が尖っていない(鈍針)カニューレを使用して注入します。なぜせっかく添付されている針を使用しないかに関しては以前もお伝えしたように、不用意に血管を刺して内出血を起こさないため、万が一、血管内にヒアルロン酸が入り込まないため、です。
スタイレージSを注入した後は、こんな感じになります。
スタッフが少なかったため、自撮りです。以下の画像も自撮りで失礼します。
スタイレージMは口元のシワなどに使用します
スタイレージMはスタイレージSよりはヒアルロン酸の粒が大きいので口元のシワ(「マリオットライン」腹話術の人形の口元の線に似ているから)に適しています。
ヒアルロン酸の注入(フィラー注入)でイメージされる、シワを改善の典型例です。
私の場合、自分ではあまり気になっていなかったのですが、プロ中のプロの松下医師的には「院長のここが気になっていたんですよ」だってさ(笑)。
右上から左下のシワ、これは持病の頚椎ヘルニアの治療のために、首にコルセットをはめていて、その影響ですから無視してくださいね。
ここにスタイレージMを注入します。
これ自撮りだと効果がよくわからないかも。まあ、あまり効果がなさそうな画像をしっかりとアップするのが私の体験レポートの良い点でもありますから。
さらに顎の部分にスタイレージXLを注入することによって、口周りのたるみを改善することができるのです。
スタイレージXLはしっかりボリュームを出して、たるみや輪郭を調整します
ヒアルロン酸を直接シワの凹んだ部分に注入するのは基本中の基本であり、今ではヒアルロン酸の注入によってリフトアップ、つまりたるみを改善する方法も考案されています。
ヒアルロン酸注入によってたるみを改善する方法は顔の解剖学的構造をよーく理解している医師に任せないと、悲惨な結果になる点にご注意くださいね。
私はこの技は知らなかったのですが、説明を受けて「なるほどねえ」と大きくうなずきました。
ほうれい線の凹んだところだけに、ヒアルロン酸を注入しても効果はいまいち。顔面の骨の中心でぽっかり穴があいてます、解剖学的には「梨状口」と呼ばれる部分です。小鼻の横の凹んでいる部分と言ったほうがわかりやすいかもしれません。
ここの皮膚の厚みが老化とともに薄くなることも、ほうれい線を目立出せる大きな原因になっています。
ここの部分ね↓
この凹んだ部分にはヒアルロン酸の粒が大きく、しっかりした感触のあるスタイレージXLを使用します。
するとこのような結果に↓
さらに、顎の輪郭もスタイレージXLで盛り上げます。
ほうれい線の下の部分もかなり目立たなくなりましたし、マリオネットラインもスッキリ。さらに凹んでいた輪郭も修正できたようです。
スタイレージの種類が多数である理由、なんとなく理解。でも⋯
たかがヒアルロン酸、されどヒアルロン酸的に使う部位、改善する目的によってヒアルロン酸の使い分けが必要であることは、請求書の処理担当である私も理解できました。
いつかはスタイレージシリーズ全13種類を試してみます(約束はできないけどね)。
スタイレージS・M・XLの特徴を整理すると
- Sは皮膚の薄い部位や浅い層に注入する場合に使用
- Mは中くらいの深さに注入してボリュームアップする際に使用
- XLは骨が老化現象で萎縮している部分に深く注入して土台から持ち上げると場合に使用
とお考えください。
ちょっと前にアラガン社が厚生労働省の承認得たことをウリにしている「ジュビダームビスタ®」シリーズの体験レポートを書きました。
体験レポートで使用したのが「ジュビダームビスタ®ボリューマXC」で、これはその性状からスタイレージXLとほとんど同じ目的に使用されます。ところが値段はジュビダームビスタの方がメッチャ高です。厚生労働省のお墨付きの付加価値なんでしょうかねえ。
スタイレージXLよりジュビダームビスタ®ボリューマXCの方が、効果持続時間は長いことが知られています(厳格な比較試験データは残念ながら無し)。効果が持続する期間が長いから、アラガン社のヒアルロン酸の方が高い、と大人の対応をしますね(私はアラガン社の社風がちょっと苦手)。
ヒアルロン酸の種類はここで紹介したのはほんの一部であり、多数のメーカーが多数のヒアルロン酸シリーズを製造しています。ご自分がどの点が気になり、どのようにしたいのかをうまく伝えることのできる美容担当医師を見つけることも重要だと思います。
しかし、当院美容担当の松下医師は私の口元のシワというか、たるみというか、老化が気になっていたのね、今回始めて知りました。
美容皮膚科に興味を持った方、美容皮膚科治療歴ベテランの方もご自身のリクエストだけではなく、ピンポイント的に「ここをこうすればこうなりますよ」とご自身では気が付かなかった部位の治療に関するアドバイスをくれる医師を見つけることをおすすめします。
ちなみに標準的なスタイレージの使用量は年齢÷10=だそうです。
30歳なら3本、40歳なら4本、50歳なら5本ってことです。
かなり高額になりますので、治療前に担当医としっかりご相談くださいね。