市販薬が発売されたことによって特に女性の間で「肝斑」という言葉が流行っています。 しかし、肝斑の診断は医師でも迷うことがあります。
トランシーノというシミの一種である肝斑に効果がある薬
肝斑とは
- 16歳以上に発症する後天性の色素斑
- 左右対称の場合が多い
- ほほ、額、唇に出やすい
- 症状に変動がある
- 髪の生え際、眉毛の部分にはできない
- 女性に多い
このような条件を備えた顔における色素斑のことです。
しかし、これと見分けなければいけない疾患に ADM(大人になって出現する青あざ)、扁平母斑、炎症性色素沈着、老人性のシミがあります。 また、これらの疾患が混じって存在する場合も珍しくはありませんので、注意が必要です。
トランシーノの添付文書
トランシーノの注意書きをよく読んでみると興味深い記述がありますが、 多分飲んでいる方でもすべてに目を通していないのではないでしょうか?
主成分のトラネキサム酸は医療機関では出血を止めるために使用されるものです。 また、腫脹を抑える働きがあるために風邪などでのどが腫れているときにも使用されます。
医療機関では一日量750㎎を標準的に使用します。 一方トランシーノのトラネキサム酸の含有量は同じく750㎎です。
なんでこんな細かいことを言うのか?
実はトラネキサム酸を使用する場合、 私たち医師は常に脳梗塞のリスクを考えながら処方しているのです。
トラネキサム酸の止血効果は脳の血管が詰まってしまう、脳梗塞を誘発しかねないからです。
そこでトランシーノの注意書きを見てみますと、書いてありました。 「55才以上の人、血栓症のある人、血栓症を起こす恐れのある人」は服用前に医師又は薬剤師に相談してくださいと。 また、お肌の調子が気になりだす人とオーバーラップする年齢層の方が服用することが多い 「経口避妊薬」いわゆるピルを飲んでいる人も注意が必要です。
でも、普通市販薬を飲む場合ここまで読む人って少ないですよね。
レーザーで治療
肝斑が症状として現れる年齢はちょうどお化粧を始める時期と一致しています。 また、肝斑は高齢になればなるほど自然に治癒していきます。そこに目を付けた医師がいます。 つまり肝斑、肝斑と騒いでいても 唯の化粧による炎症や不適切なクレンジング、洗顔方法が主要因なのでは? と問題提起をしているのです。
顕微鏡で病変部を比較しても肝斑とされているものと、色素性沈着型接触性皮膚炎に違いは認められませんでした。 今まで肝斑にレーザー治療はやってはいけない治療とされていましたが、 ここ数年でレーザーが肝斑治療に積極的に使用されるようになってきました。 別に威張るわけではないのですが、 当院では10年以上前からレーザーを肝斑治療に使用してきて全く問題は起きていません。 美容医療は大病院より一開業医の方が進んでいる珍しい医療分野ともいえます。 ちなみに、肝斑はそもそもスキンケアの問題ではないかと、大論文をお書きになった葛西先生も開業医です。
トランシーノを二か月飲んで効果が無ければ、ぜひ専門医にご相談ください。