皮下脂肪を落とす「脂肪溶解注射」とそのほかの治療方法を比較してみました

輪郭整形

皮下脂肪を落とす治療を医師が比較検討した結果

内臓脂肪に比べて、落とすことが難しいと言われている皮下脂肪対策を検討してみます。

最近、目に付く治療方法は脂肪溶解注射です。脂肪溶解注射のことをメソセラピーと呼んでいる医療機関がありますが、なぜ脂肪溶解注射=メソセラピーなのかを説明したサイトがありません。このメソセラピーが脂肪溶解注射を意味するのかを知ると、他の皮下脂肪を落とす治療法との違いがわかりやすくなるので、ひとまず説明をしますね。

なかなか落ちにくい皮下脂肪対策としての脂肪溶解注射はこんな方法です

外科的に脂肪を取り除く方法は脂肪吸引です。

薬を使用することによって皮下脂肪を落とす方法もあります。

脂肪溶解注射はこの中間に位置します。効果としては以下の通り。

脂肪吸引 > 脂肪溶解注射 > 薬

ちょうど外科的な手法と内科的な手法の中間に位置しますが、その「中間」を意味するギリシャ語が「メソ(meso)」なんです。外科的治療と内科的治療の「中間の治療」がメソセラピー本来の意味です。しかし、なぜか日本では「脂肪溶解注射=メソセラピー」と解釈されるようになっています。他院のサイトを見回しても「脂肪溶解注射(メソセラピー)」となってるのが、ほとんどで「Mesotherapy」と書いてあるところさえ見つかりません。

皮下脂肪を落とすための治療として脂肪溶解注射の意味するところは「脂肪吸引より効果はないけど安全で、内服薬(例えばコッコアポ)より効果はあるけどちょっとリスキー」です。

皮下脂肪を落とすために使われている脂肪溶解注射の種類

当院で使用しているもの、あるいは使用していた脂肪溶解注射剤の一覧表です。

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当院独自の家内制手工業によってまとめたものです。ちょっと見にくいですねぇ、近いうちに見やすい表にして再公開しますね。

トップにある「ミケランジェロ」という名前の薬を使った脂肪溶解注射が今の所イチオシとなっています。「ミケランジェロ」って恥ずかしい名前の製品ですので、今まで未公開としていたのですが、先日ブログでこの皮下脂肪治療法をぽろっと書いてしまったところ、問い合わせが殺到(当院調べ 約2件w)あったので、ここでバッチリ公開しまーす❗→効率よくダイエットする為に遺伝子検査は必要か?それより楽チンで簡単な方法があるのに⋯

美容系って名前からして怪しげなムードがプンプンと漂ってきますけど、なぜこの薬が効果的に皮下脂肪を取り除くことができるのか、を次で解説しますね。

脂肪溶解注射の主要成分ホスファチジルコリンはこんな働きをして皮下脂肪を落とします

コレステロールを減らす薬って今や一般的ですよね、このコレステロールを減少させる注射薬が欧米では使用されていました(日本では脂質を取り除くための注射薬がやっと「レパーサ」という薬が2016年4月20日に薬価収載されました)。

脂質を取り除く注射薬なら、直接皮下脂肪に注射しちゃえば効果が出るんじゃないかと考えた人がいて(詳細不明)、皮下に注射したら脂肪減少効果が確認されたんです。有効成分はフォスファチジルコリン(「phosphatidylcholine」⋯ホスファチジルコリンとも表記します)で別名「レシチン」であり、サプリなどにも含まれています。特に大豆から抽出される植物性レシチンは、食品にも使用されるくらい安全性が高いものです。

注射によって皮下脂肪に入り込んだフォスファチジルコリンは脂肪細胞を溶かします(だから脂肪溶解注射って呼ぶんです)。さらにカルニチンという成分が脂肪をミトコンドリア内に入れ込む作用があり、エネルギーとして消費されます。これらの代謝物は血管系・リンパ系に流れ込み、尿や便として体外に排出されるのです。効果としては脂肪吸引には劣りますが、内服薬やサプリメントと比較すると、それこそ「見る見る効果が実感できる」ものです。

安全性は海外では注射薬として使用経験がありますが、脂肪吸引のように最悪死亡事故につながるような報告はありませんのでご安心ください。注射の際に内出血や治療後の疼痛もみられますので、安全性としては「脂肪吸引 < 脂肪溶解注射 < 内服薬」と正直に記載させていただきます。

脂肪溶解注射はちゃんとした論文あるのか?

ブログでインチキくさい治療法に関して述べる場合、エビデンスはあるのか?医学論文はあるのか?とよく書かせていただいています。当然「脂肪溶解注射に関する医学論文を提示せよ」とのご指摘を受けることを予測して、準備させていただきました。それがこれです⋯「Metabolic and Structural Effects of Phosphatidylcholine and Deoxycholate Injections on Subcutaneous Fat」(Aesthet Surg J. 2013 Mar; 33 (3) : 400–408.)。フォスファチジルコリンを皮下脂肪に注射した効果を調べたものです。症例数は13人と統計学的にどうよ的なものではありますが、脂肪細胞を破壊して腹部の皮下脂肪を減少させる効果が示されています。

医学界で非アカデミックな分野であり、「美容医療かよ」的に下にみられるこの業界です。使用前・使用後の画像の羅列ではなく、作用機序・安全性そしてエビデンス、できれば医学論文を提示して、多くの方に有益な情報を伝えるような努力が必要ではないでしょうか?

桑満おさむ(医師)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

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