以前は皮膚科の偉い先生たちが、肝斑治療にレーザーは禁忌と言っていました。
ところがどっこい、現時点ではレーザーを使った肝斑治療が主流となっています。飲み薬(処方薬も市販薬もある)での肝斑治療もそれなりの効果はあっても、服薬を継続することに関してはリスキーですし、製薬会社も長期服用は控えるように注意喚起しています。
さらにこのような濫用も問題になっていますね。
当院でも複数のレーザーを併用することによって肝斑治療はそれなりに実績を重ねてきたのですが、レーザー自体が古くなったというかポンコツになりつつあるので、今回「Q-スイッチNd:YAGレーザー ハリウッドスペクトラ」を導入しました。スペクトラは以前から普及したレーザーでしたが、当院が今回導入した「ハリウッドスペクトラ」はその最新上位機種です。ハリウッドスペクトラでは長ったらしいので、スペクトラと呼んだ方が馴染みがあると考え今回はスペクトラで話を進めます。
スペクトラレーザーはどこが凄いのか?
スペクトラレーザーはシミからスキンリジュビネーションはもちろんのこと毛穴やニキビ跡にも治療効果が理論的にも臨床的にも認められているのですが、当院としては一番人気の高いレーザートーニングに使おうと考えています。
↑は右頬のみレーザーを照射した症例です。
レーザートーニングはレーザー(通常はQ-スイッチYAGレーザー)を皮膚に照射することによって美白効果・皮膚の若返り・毛穴の縮小を目指す治療です。今回導入したスペクトラレーザーは「ハリウッドトーニング」と呼ばれる肝斑専用の設定が可能です。
デュアルピールってなんじゃ?
ちょっと横道にそれるけど、このスペクトラはデュアルパルスモードによるピーリング治療がウリなんですが、デュアルってdualであって、語源的にはラテン語のduoから派生したものなんだけど、なぜかW(ダブル)的に使われていますね。
スペクトラは様々なモードを使って肝斑治療をするので、中には2つのモードを使用して肝斑を治療した場合はデュアルでいいのですが、効果はダブル(2倍)、つまり肝斑治療と肌のハリなども取り戻せるので話は複雑になってきます。
まあ、治療効果があれば患者さん的にはネーミングはどうでもいいことかもしれませんけど。
スペクトラモードとは?
肝斑治療には使うことは無さそうなモードでスペクトラモードという設定がこのレーザー機器には備わっています。このモードが旧スペクトラのウリだったようですが、当然当院が今回導入した「ハリウッドスペクトラ」にもその設定はあります。
「スペクトラ(Spectra)」とのネーミングは、たぶん物理学用語のスペクトラム(Spectrum)から派生した言葉なんでしょうね。じゃあ、スペクトラムって何?と言われたらそれを説明するにはかなり時間がかかるのでので端折ります。
「Q-スイッチNd:YAGレーザー ハリウッドスペクトラ」のスペクトラモードは300ミリセカンド(ミリ秒は1秒の1000分の1、つまり0.001秒)という、通常のシミを取るときに使用するナノセカンド(ナノ秒は、1秒の10億分の1、つまり0.000000001秒)より長い時間レーザーを照射することによってコラーゲンを活性化して肌のキメやハリを改善しようというものです。
これに今までのレーザートーニングで5ナノセカンド(ナノセックって呼ぶことが多いけど)使われていたQ-スイッチYAGレーザーモードを組み合わせることによって、限りなくダウンタイムを短く、限りなく効果を出す、ことを目指すことが可能となったのです。
先日、「ハリウッド」とこのレーザー治療器についてのブログ記事を書いたのですが、ちょっとネーミングがイマイチなんで今後はスペクトラと院内では呼ぶようにしよっかな。
もちろん通常のシミも治療できます!
スペクトラはもちろん通常のシミも治療できます。でもここで注意していただきたいのが、ご自分で「シミ」と判断していても、実はシミでは無く黒子(ほくろ)であることも少なくは無いですし、脂漏性角化症(しろうせいかくかしょう)または老人性疣贅(ろうじんせいゆうぜい)だったりすることも珍しくはありません。
さらには悪性黒色腫だったりすると下手に手をつけることはかなりリスキーなので、熟練した医師の診断のもとに治療を進めることが重要になるのでご注意ください。
肝斑と通常のシミが混在している例はよく見かけます。そのような状態であるのであれば、治療はQ-スイッチNd:YAGレーザー「ハリウッドスペクトラ」(なんでハリウッドというネーミングにしちゃったんだろう)、略して「スペクトラ」にお任せくださいね。
さらに「コリメートビーム」とか「トップハットビーム」とか、さらには「ハリウッドトーニング」な名称の治療法が可能という特長もスペクトラはあるのですが、混乱する可能性があるので後日解説しますね・・・メーカーはなんでこんな複雑なネーミングを多発したのかは不明。