寄贈軟骨ってご存知でしょうか?鼻尖縮小術や耳介軟骨移植といった「鼻尖形成」に興味ある方は知っているかもしれません。また、韓国で鼻の整形をすると必ずと言っていいほど入れられるのが寄贈軟骨ですので、韓国の美容整形が気になっている方には馴染みあるワードでしょう。寄贈軟骨を使うことでリーズナブルな美容整形が可能とはいえ、リスクやデメリットが気になる人も多いはず。そんな「寄贈軟骨」について徹底的に解説します。
寄贈軟骨って安全なの?
寄贈軟骨とは、亡くなったヒト(あるいは動物)から採取した肋軟骨(肋骨と胸骨を結合する軟骨)に放射線を照射したり、特殊な薬品で化学的処理を施した軟骨のことです。
放射線や特殊な薬品を用いて処理するのはなぜ?
他人の軟骨を移植すると必ず拒絶反応が起こります。そのため、放射線や特殊な薬品を用いて軟骨細胞を死滅させる処理をします。すると抗原性がなくなり、よそ者と認識されなくなり拒絶反応を起こしにくくなるのです。
放射線や特殊な薬品を用いて処理すれば本当に100%軟骨細胞は死滅するの?
100%完全に死滅するわけではありません。韓国で移植された寄贈軟骨にトラブルが生じ、日本で摘出した後、顕微鏡でよく調べた結果、寄贈軟骨の軟骨細胞は1割程度生きていたという報告があります。つまり、完全に抗原性をなくすことはできないので、大なり小なり拒絶反応が起こってしまいます。
軟骨細胞が死滅した寄贈軟骨を移植して生着するの?
通常組織を移植するときには生きた組織を移植しないと生着しません。自分自身の軟骨を移植する場合に、軟骨を取り出した段階で軟骨細胞に栄養を送る血流が途絶えるためにそのまま放置すると軟骨は完全に死滅してしまいます。すみやかに移植すれば、周りから血流が再開され、移植軟骨細胞に再び栄養がいきわたることで生着し、移植した部位で生き続けます。拒絶反応を起こさせないために、軟骨細胞を死滅させた他人の軟骨を移植しても生着することはなく、結局は異物と認識され、体内から排出されなくなってしまいます。
生着しなかった寄贈軟骨はどうなるの?
生着しなかった寄贈軟骨は体にとって異物と認識され、それを排除しようとする防御反応が起こり、赤くなって腫れたり、熱感や痛みなどの局所症状が出ます。寄贈軟骨は徐々に分解され、スカスカになっていくため支持組織としての強度がなくなり、鼻が変形してきます。また、大きな寄贈軟骨だと完全に分解されず中途半端に残ってしまいに異物反応が長引くことで、異物肉芽腫が発生し硬いしこりになることもあります。また細菌が感染すると完全に寄贈軟骨を取り除かないかぎり感染が治り切らず、膿が出続けることにもなります。
他人の軟骨を移植して肝炎やエイズなどの病気がうつることはないの?
現在よく知られている肝炎ウイルスやエイズウイルスなどはよくチェックをしてそういう人からは軟骨は取らないにしても、スクリーニング法のないクロイツフェルト・ヤコブ病や未知の病原体に感染した人までは除外しきれないので、他人からの組織の提供は感染症のリスクがたえず伴います。そのようなリスクのあるものを、健康体の人に美容目的でリスクを冒してまで用いるのは大いに問題があります。
なぜ、そんな危険な寄贈軟骨をクリニックが使うの?
自家肋軟骨を取るのは技術を要し、手間暇がかかります。また誤った手術操作により気胸という重大な合併症を起こしてしまうリスクもあります。胸に傷跡も残ってしまいます。そんなわけで、腕に自信のない医師は、簡単に手に入る寄贈軟骨を使いたがるのです。寄贈軟骨を使うと、手術時間は短くなり、費用も安くなり、傷跡も残らないといううたい文句で、患者さんにすすめるのです。いくらそのような利点があると言われても、結局肝心の移植軟骨がうまく生着せず、吸収されたり、変形したり、異物反応をおこしたり、感染源になったりというデメリットの方が圧倒的に多いわけですから、患者さんの利益を最優先する善良なクリニックで寄贈軟骨を使うことはありません。
現在、寄贈軟骨が入っている場合はどうすればよいの?
寄贈軟骨をすべてきれいに除去し、代わりに自分の組織に入れ替えるのがベストな方法です。自家組織を取った部分に傷跡が残ってしまったり、手術時間が長くなったり、費用が高額になってしまう欠点はあります。ですが自家組織であれば生着も良く、拒絶反応・異物反応が起こることもなく、感染のリスクもありません。何より常に抱えていく不安がなくなります。他院修正をご検討ください。