最近、めちゃめちゃ遅ればせながらインスタのアカウントを作って、時々美容整形アカウントを覗いてみると、目の下のたるみを治療する美容整形手術関連で「ハムラ」というワードをしばしば目にします。素人さん(患者さんでしょうね)も美容外科医も「ハムラ」を連発しています。
目の下のたるみや出っ張りを治す「ハムラ法」って何?どんな手術?
美容外科に関心の高い患者さんが、SNSで日常使いしている「ハムラ」は当然「羽村」じゃないことは分かっていても、米国の医師によって考案された手術がハムラであり、ハムラはそもそも医師の名前であることは知っているのかな?
目の下のたるみに関する美容外科や形成外科の論文は海外では多数あります。
ハムラ、ハムラと言う前に目の下のたるみや出っ張りの原因が何であるかを知ることが重要
自分が気になる症状は何が原因であるかを知ることが大切だと思います。自己判断で症状の原因をきめつけて治療方法までを先に決めてしまうのは全ての医療においてリスキーであり、後悔することになります。
目の下のたるみで眼瞼の下の脂肪が飛び出した状態(専門用語では眼瞼脂肪脱と呼ばれている状態)は目の下の弛みだけではなく、目の下が盛り上がって見えます。この状態は「baggy eyelids deformity」(日本の美容外科医は「バギーアイ」と呼んでいることが多い)と海外の医学論文では書かれています。
baggy eyelids deformityを日本語に訳すとしたら、「baggy」はだぶだぶ、「eyelids」はまぶた、「deformity」は変形、となるので、「だぶついた弛みによる瞼の変形」ってことになりますね・・・一般的には目の下のたるみと呼ばれる状態とほとんど同じ意味で、話は元に戻るけど「眼瞼脂肪脱」を意味しています。
単に目の下がたるんでいるだけではなく、たるみは老化によって脂肪を抑える組織が緩むために脂肪脱と呼ばれる状態になって、脂肪が突出してきているのかもしれません。
美容外科手術で失敗しない為には、症状の原因を確定して、その原因を修正する為の手術を選択するべきであり、その手術によって他の部位にマイナス面が出てしまわないかまでを考えてくれる担当医を見つけることが重要になってきます。
【施術詳細】 金額:44〜55万円(健康保険適用外) リスク:内出血、腫れ、左右差、痛み、感染、凹凸、下眼瞼外反等
これは当院美容外科担当の中川剛医師の表ハムラの症例写真です。2022年3月現在、症例写真協力者を募集中です。症例写真の条件やオペの相談をご希望の方はお問合せメールをご利用いただくか、電話をくださいませ。
目の下のたるみの手術に関連した、tear troughとか、tear trough deformityって何?
海外の文献だと「tear trough 」とか、「tear trough deformity 」なる言葉がじゃんじゃん出てきます。例えば「Tear Trough Deformity: Review of Anatomy and Treatment Options」[1](PMID: 22523096)では美容外科医が患者さんに適切な治療方法を提示するためにはtear trough deformityの状態をしっかりと把握することの重要性を伝えています。
「tear trough」や「tear trough deformity」とは目の下の半円形の目立つ溝のことです。「tear」には涙という意味以外に「裂ける,破れる」との意味もあります。「trough」の意味は凹みとか溝ですから、涙が流れる時のように見える溝で、「Tear trough implants for correction of tear trough deformity」[2](PMID: 8485949)でハワイ大学のJohn Flowers医師(この先生、20年以上前に当院で美容部門を併設するときに会いに行ったことあります)が提唱した目に下にできるシワのことです。
左側の目の下に見えるのがtear troughで、このサイトではフィラー(ヒアルロン酸などを注射する治療)を使った治療を紹介しています。
tear troughは目の下の皮膚のたるみだけで生じるワケでは無いことを、Flowers医師は論文中で伝えています。繰り返します、美容外科手術を成功させるためには、どうしてそのような症状が出ているかを見分けることが重要であり、知識をしっかりもった医師の診察を受けることがスタートだとも言えるのです。
目の下の半円形の溝が目立つときはハムラを選択
Hamra法(ハムラ法)は1995年に米国の形成外科医のSam Hamra医師による論文「Arcus marginalis release and orbital fat preservation in midface rejuvenation」[3](PMID: 7624408)における顔の若みえに関する報告の中のひとつとして紹介された画期的な下まぶたの美容外科手術方法です。
既存の下眼瞼のたるみを治療する手術だと下瞼の輪郭が凹んでしまって、「整形手術を受けました〜❗」ってことがモロにわかる外観になることが問題だと、ハムラ医師は論文中で指摘しています。
しかし、眼下脂肪脱があるからと言って、即ハムラ法が適用されると考えるのはちょっと問題が生じます。
大変重要なことなので徹底的に繰り返しておきます。美容外科手術を成功させるコツは医師が的確な診断を下し、適切な治療方法を選択する必要があります。患者さんが自己判断して「この手術をお願いします」ではマズイのです。
ハムラ法は単に目の下の脂肪を取り除く経結膜的脱脂切除法とは大きく異なります
ハムラ法は下瞼の脂肪を温存しながら、目の下のたるみと出っ張りを治療する画期的な手術なのです。
目の下瞼の裏側から脂肪を取り除く「経結膜的脂肪切除」という、切らない目の下の脂肪除去方法的に受け止められている手術方法があります。この手術は若い人には適するものかもしれませんが、歳をとると共に目の下が弛んでしまった、皮膚自体が緩んでしまっている状態だと良い結果にはなりません。
目の下のたるみや出っ張りの美容外科手術は症状の見分けが重要
やっとハムラ法に辿り着くことができそうです。
ハムラ方が一番適している症状は次のようなの症状です。
- 目の下がたるんでいる
- 目の下のたるみに飛び出した脂肪が関係している
- 半円形上のシワが目立つ
以上のような場合はハムラ法による手術が適していると考えられます。
なぜいきなりハムラ方とかの目の下のたるみは出っ張りの話をし出したかというと、以前から気になっていた私自身の目の下のたるみを近いうちに積極的に治そうかと考えているからなんです。
ところが私の場合も目の下のたるみの原因はひょっとしたら、加齢で大幅に垂れ下がってきた上瞼の弛みが影響している可能性を、当院に協力してくれる若手の美容外科医に指摘されたからです。上瞼が垂れ下がってくる手術を先に行って、目の下の弛みがどのようになるのかを観察するために、ある程度の期間をあけてから目の下の治療方法を検討するべきだとのこと。
美容外科クリニックを受診するときに、「ハムラをお願いします」と言っても、本当にハムラ法が適した治療方法だとは限りません。手術方法を決めるにあたっては必ずダウンタイムなどのマイナス面を十分に確認するとともに、自分で治療方法まで提示するのはトラブルの元です。
※ハムラ法の詳細はハムラ法を応用した裏ハムラなる手術方法もありますので、別の機会に詳しくお伝えしますね(その頃は私が何らかの手術を受けているかもしれないし)、お楽しみに!
参考文献
- Stutman RL, Codner MA. Tear trough deformity: review of anatomy and treatment options. Aesthet Surg J. 2012 May;32(4):426-40. doi: 10.1177/1090820X12442372. PMID: 22523096.
- Flowers RS. Tear trough implants for correction of tear trough deformity. Clin Plast Surg. 1993 Apr;20(2):403-15. PMID: 8485949.
- Hamra ST. Arcus marginalis release and orbital fat preservation in midface rejuvenation. Plast Reconstr Surg. 1995 Aug;96(2):354-62. doi: 10.1097/00006534-199508000-00014. PMID: 7624408.