安全な上に効果が半永久的に持続する脂肪注入

輪郭整形

顔への脂肪注入は保tのうに安全なのか?

脂肪注入ときくと、定着しない・失敗・後悔といったネガティブな印象をお持ちの方が多いかもしれません。たしかに、脂肪吸引・注入ではトラブルが多かったのも事実です。脂肪注入は技術的に難しいのですが、シリコンやヒアルロン酸には替えられないメリットがあるのもまた事実。安全で、しかも半永久的に効果が持続してしまう脂肪注入について詳しく解説します。

脂肪注入とは

患者さんの体から採取した脂肪を注入して、目の周りの凹みやほうれい線などのしわを改善したり、顎の形を整えるなど輪郭を変えたりする治療法です。シリコンなどの異物の埋入による後遺症の危険がなく、かつ定着するので半永久的に効果が持続するという特徴があります。

ボリュームを出したいところにどこにでも注入することができるので、豊胸術などの治療に使うこともあります。

私が初めて脂肪注入を行った修行時代の話

美容外科医松下医師の修行時代

私の修行時代の写真です

現在では広く行われるようになった脂肪注入ですが、私が美容外科の修行を始めた頃はまったくといっていいほど顧みられていませんでした。
その唯一の例外が私が修行をしていたI院長の美容クリニックです。
このクリニックでは患者さんの組織を使った自己組織の移植を盛んに行っていたのです。

鼻を高くしたり、豊胸するのであればシリコンなどの異物を入れるのが当時の常識でした。
自己組織は定着率が100%ではなく、何割か吸収されてしまうので、最終的な仕上がりの形が予測しにくい欠点があります。その点シリコンなどの人工物は、吸収されることはないので、形はデザイン通りに作りやすいのですが、年数が経つにつれて、周りの組織に悪影響を与え、様々なトラブルが発生してきます。

I院長はかたくなに自己組織を使うことにこだわっていたので、同業者からは「変り者」と言われていました。

I院長は確かにマニアックな変わり者でした。

私が美容外科で働くようになった頃には、大学病院にも美容外科がありましたが、I院長が開業した時代は個人の美容外科が都内でも数軒しかないという時代でした。
そんな時代に東京大学の医学部を出て、初の美容外科医になったということだけでも変わり者であるということがわかるかと思います。

美容外科医というととにかく格好をつけて、高いブランドの服を着る人が多いなかで、I院長はまったく無頓着でした。
いつでもジャージにリュックサックという姿で歩いていて、どこにでもいる普通のおっさんという感じでした。

仕事にしか興味がない。という感じでした。
その分、といっていいのかはわかりませんが、美容医療に関する熱意は常人のそれではなかったです。

このクリニックには非常に細かいマニュアルがあって、術前の注意事項やあらゆる危険性が網羅されていて、これに従って手術をするのです。
トラブルがあるたび改定されます。とにかくこのマニュアルはすごかったですね。改定は病的なぐらい徹底していました。

I院長は世界中の美容医療に関するありとあらゆる論文を読んでいて、知識量がその他大勢の医師と全く違いました。
新しい優れた術式を見つけると、方式を変更していきました。
どんどん知識を取り入れて、どんどん変えていくのがとにかくすごいです。

海外の学会に行くことはありましたが、日本の学会には出席することはありませんでした。わざわざ時間をつかってまで、自分より下の医師の発表を聞く必要はないと思っていたのです。だから美容医療の業界ではずっと一匹狼でいたわけです。

あともうひとつI院長の人柄を表すエピソードを書いておきたいと思います。

I院長は治療について気がついたときにはすぐその場で解決しないと気がすまない人でした。
何か論文を読んでいて気になったり、何か思いついたりしたときには、たとえ手術中であってもすぐに担当医師が呼ばれるのです。なにしろ四六時中仕事のことだけ考えているという感じなのです。

このクリニックは本当にすごかったです。

大学病院並みの設備、人材がそろってました。
手術室もいくつもあり、入院設備もあり、レントゲンも撮れるし、血液検査もその場でできる検査設備もありました。
麻酔科医もちゃんといるし、美容皮膚科を除いて美容外科だけで常勤医師4名ぐらい、非常勤はさらに4・5名働いていました。
この美容外科の医師は全員が形成外科の出身で、今のチェーンクリニックのなんちゃってみたいな美容外科医と違う優れた技量の医師ばかりでした。

ビルまるまるがこのI院長の経営している施設で、美容外科、美容皮膚科、審美歯科、エステ、フィットネスと総合的に美に関する施設を運営していました。

こんなに儲かっていそうなのに、労働環境は大変なものでした。

今の時代だと美容外科医は高給取りが当たり前なのですが、バブルの真っ盛りの頃にもかかわらず月給30万円という薄給で、しかも住み込みです。毎日が当直みたいなものです。
夜中であろうが何であろうがいつでも呼び出されて、患者さんの処置にあたらねばなりませんでした。もちろん残業代なんてものはありません。

I院長のクリニックだけだとまったくお金がたまらないので、休日は別のクリニックでアルバイトをしていたのですが、それが今の五本木クリニックの桑満院長との縁でした。このあたりのことは別の機会に書こうかと思います。

脂肪注入の手順とポイント

前置きが長くなりましたが、脂肪注入の手順とポイントについて説明します。
上にも書いたように、脂肪は吸収されてしまうという難点があります。

そこで、狙ったデザインになるようにするには何点か注意が必要です。

脂肪を採取する部位

充分な量を採取できる箇所から取ることが重要です。お腹は量は充分なのですが、少々リスクが高い箇所です。ヘルニアなどがあると危険です。
ふともも、ウエストこのあたりから取ることが多いです。
ふくらはぎから取ってほしいという希望があった場合は、ごく少量であればいいのですがあまり量が取れないので、あまりおすすめできません。

脂肪の採取のポイント

私は若い頃は脂肪注入はかなりやりましたが、バストの脂肪注入では片側200cc、両方合わせると400cc程度必要になります。
ギュッギュギュッギュとカニューラ(カニューレと呼ぶ人もいます)を動かさないといけないのですが、非常に重労働なんですね。私はこれで腱鞘炎になりました。
このような大量の脂肪を吸引する作業は、若い元気のある体育会系みたいなお医者さんに向いてますね。
私はそろそろ還暦なのでちょっともうできる気がしないです。

顔に注入するのであれば、それほどの量ではないので肉体労働ではありません。しかし、これもこれでシリンジ(注射の筒)を使うのですが、機械式の吸引器とは異なり、手動で圧をかけるのでちょっと大変でありましたが、今はシリンジ自体に陰圧を掛ける仕組みのものを使用しています。

脂肪の採取

脂肪をシリンジで吸引している様子

このような感じでシリンジを使って吸引して採取します。

目安としては10グラム入れればちょうどいいというぐらいであれば、30グラムぐらいを採取します。
採取した液には正常な脂肪細胞以外に血液や、生理食塩水、麻酔薬、脂肪の中の筋状の繊維、壊れた脂肪といった不純物が混入しているので、まずその分を見越して多めに採取する必要があります。

脂肪をシリンジに吸入し終わった様子

吸引直後はこんな感じです。

良好な脂肪細胞の選別

遠心分離機にかけると、脂肪とその他の成分は重みが違うので分離します。
脂肪注入で使う特殊な遠心分離機は、通常の遠心分離機よりも大型のものが必要です。

CRFで使用する遠心分離機

当クリニックで使用している遠心分離機です。

壊れかけたり、老化した脂肪細胞はこの遠心力に耐えることができず、壊れて浮いてきます。これも除去して良好な状態の脂肪細胞だけを残します。この操作によって4~5割ぐらいは少なくなります。

遠心分離機で正常な脂肪細胞を分離した様子

遠心分離機にかけるとこのように分離します。

注入

額に脂肪を注入している様子

1箇所にまとめて注入すると定着が悪くなります。
注射器をすこしずつ引き抜きながら、細かく1滴1滴、米粒を置いていくような感じで注入していきます。

平面的なものであれば1回刺すだけで済みますが、ほうれい線などだと深さも変える必要があります。
針穴は左右ひとつづつですが、同じ場所から刺す角度を変えて深い層から浅い層へ刺し直す必要があります。

注入する総量としては、脂肪は半分ぐらい吸収されてしまうため2倍ぐらい注入します。
最初はふくらんだような感じになり、1ヶ月ぐらいはパンパンな状態になります。
パンパンになるのが困るというのであれば、2回に分けて注入します。1回目はやや控えめに注入します。
脂肪が定着するのには1ヶ月程度かかるので、2ヶ月以上たってからもう一度注入します。こうすればパンパンになったりしません。

五本木クリニックの脂肪注入治療について

当クリニックで実施している脂肪注入は、コンデンスリッチファット注入療法(CRF) という手法です。
アメリカ食品医薬品局(FDA) の認定を受けた器具を使用しています。自分の細胞を使って治療をするということで、再生医療に該当しそうに見えますが、再生医療の範疇にはなっていません。
取り出した脂肪細胞は空気に一切触れることなく体に戻すため、感染症といったリスクがほとんどないためです。

ちなみに当クリニックは、コンデンスリッチファットの認定を受けています。

CRFの認証シール

こちらが認定されたクリニックで使用できる認定シールです。

施術前・施術後

額への脂肪注入のビフォーアフター

自然な丸みを帯びた若々しいおでこの輪郭になっています。おでこ全体的にハリが出て、小ジワも目立たなくなっています。肌色の小さなテープを貼っている所が注入した針穴の部分です。

こんな人におすすめ

  • 異物を体内に入れたくない方
  • 長持ちさせたい方
  • アレルギーがあってヒアルロン酸が使えない方

それなりに脂肪がないとできないので、全身痩せている方はできない可能性があります。

最後に

ヒアルロン酸といった、安全だけど長持ちしないフィラー(詰め物)。シリコンといった、後遺症の不安があるものの長持ちする異物。
このふたつが代表的ですが、いずれも欠点があり一長一短です。

このふたつが代表的ですが、いずれも欠点があり一長一短です。このふたつの欠点がないのが脂肪注入です。
脂肪注入は技術的な難易度が高く、かつ手間がかかるので費用はかさみますが、正しく施術するクリニックを選べば非常にお勧めできる施術です。

定期的にクリニックに通うのは大変と思っていらっしゃる方は、是非一度脂肪注入をご検討いただけたらと思います。

松下洋二(医師)

鳥取大学医学部卒業後に京都大学医学部形成外科に入局。大学附属病院などで形成外科・美容外科で働いた後、2007年より五本木クリニックの美容診療部の部長に就任。

主に他院での鼻整形の失敗で悩む患者さんからの修正依頼に応えて続け20年以上経ちます。こんな私の強みは、施術後、時間が経つと一体どんな影響を及ぼしていくのか、その未来について予測ができること。医師としてこれまで患者さんと向き合ってきた経験を現場で活かすだけでなく、読者の皆さんにとって少しでも有益な情報になるよう情報発信に努めてまいります。

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