いやー、参りました。最近の美容医療に使われる素材の名前が覚えられません。どんどん新しいメカニズムによって美肌を作り上げる治療方法が考案され、名称も今まではなんとなく英語を日本語に翻訳すればイメージが伝わってきていたのにねえっ。
PRX-T33を使ってマッサージピールして、ダーマペン4を+するとベルベットスキンの出来上がり
当院の美容部で導入している美肌治療の主力であるPRX-T33は日本語に訳しても全然その正体が不明です。さらにマッサージピールなる治療方法も当院では取り入れているのですが、これはピールは「剥ぐ」という意味ですから、ケミカルピーリングの仲間であることは予想できますけど、マッサージという言葉がくっついているので、マッサージしながらピーリング効果を得る方法であることは大体予想できます。
さらに最近「ベルベットスキン」なる言葉が美容医療業界でかなり目にします。オッサン的にはベルベットといえば布のビロードを意味すること自体は知っていますが、ベルベット+スキン、となると「ベルベットのような肌」とちょっと過剰な表現になってしまって、なんとな〜く使いにくい美容用語と感じてしまいます。
追記:ヴェルベットスキンの体験レポートを書きました。お時間がありましたら、合わせてお読みくださいませ。
さらにPRX-T33とマッサージピールとベルベットスキンは密接な関係にあるようなので、自分の頭を整理するつもりでPRX-T33との謎の言葉はなんであるか、マッサージピールとは何を使ったケミカルピーリングであるのか、そしてなんでベルベットスキンなんていう美容用語が頻繁に使用されているのかをご説明しますね。
PRX-T33の成分はかなり研究されている様子です
理屈っぽい、小うるさいオッサンと院内んで認識されている私ですが、確かにだいぶ以前にPRX-T33という美容医療に使用する薬剤の導入を当院美容スタッフに許可した記憶があります。
その時は確か医学論文を探し出して、「これならある程度、効果とリスクが検証されているから採用OK」としました。
ちなみにPRX-T33の成分はトリクロロ酢酸(Trichloroacetic acid、略してTCA ) と過酸化水素(Hydrogen peroxide、化学式だとH2O2 )とコウジ酸(Kojic acid)です。
トリクロロ酢酸(以下、TCAで話を進めます)は1920年代ころからケミカルピーリングに使用されており、それこそ肌が剥ぐ(ピーリング)効果が激しいために、メラニンの多いとされる日本人には適していないと考えられていた時期もありました。
これは海外の症例です。ニキビ跡、特に凹んだニキビ跡にTCAは効果を発揮します。
でも、かなり強烈な作用のために昔、ハリウッド女優が一定期間メディアに登場しないと「彼女は多分今頃は肌をべりべり剥いでいるんだよ」と囁かれたこともあるようです。
このダウンタイムが強い美肌のためのピールング手段であるTCAをある濃度(33パーセント)にすると、激しく皮膚を刺激するようなことが無くても、肌をきれいにすることを発見したイタリアの皮膚科医がいたのです。
この女性です。
TCAは高い濃度で皮膚に使用すると、液剤をたらした場所が真っ白になってしまい、かなりのピリピリした痛みを感じます。当院ではかなり以前はTCAを細い刷毛の先に付着させ、凹んだニキビ跡治療に使っていました。
PRX-T33のもう1つの主成分である過酸化水素(以下、H2O2で話を進めます)はTCAの刺激性を抑えつつ、ある濃度のH2O2は創傷治癒過程を促進させることがわかっています(適正なH2O2の濃度は0.15パーセント程度)。
PRX-T33はTCAとH2O2を組み合わせることのよって、今までのケミカルピーリングより副作用が少なく、より効果的に美肌を手に入れることを可能とした、かなり優れたピーリングのための薬剤と判断しています。
ところで、もう1つの成分であるコウジ酸はどうなった、忘れられちゃった成分じゃありません。コウジ酸のコウジは「麹」であり、日本酒等に使われる「麹」のことです。お酒を作るときに大活躍する杜氏の方々の手がきれいで白いことに気がついたことから研究が始まり(多分、明治時代)1988年にやっとこ厚生労働省によって肌の美白成分として認められました。
世界中の化粧品で美白効果を謳っているものにコウジ酸は含まれています。コウジ酸の美白のメカニズムはメラノサイト(シミの原因となるメラニンを作る細胞)が過剰に働かないようにすることで美白効果を発揮します。
海外のコウジ酸入りの石鹸の販売サイトの画像。だははっ、流石にコウジ酸だけでここまでの効果は期待できません(どう見ても、これは画像が加工されているし笑)
PRX-T33はピーリング効果は高いけど、ちょっとリスキーであったTCAの副作用を抑えつつ、創傷治癒過程を促進するH2O2をプラスして、さらに美白及び美肌効果を高めるためのコウジ酸をトッピングしたピーリングに使用する薬剤であることがこれでやっとこ理解できました。
海外の美容系サイトにあったPRX-T33の効果、これもちょっとねえ的な感想が無いわけじゃないです(苦笑)。
しかり、PRX-T33の「X」の意味するところが不明です。開発者のRossana Castellanaさんにメールして尋ねてみようかなあ。
マッサージピールとは何?
マッサージピールという美容治療メニューが当院にはあります。これは前述のPRX-T33を顔に塗って肌をピーリングする方法を意味しており、つまり施術名ってことです。
ピーリングに使用する薬剤がPRX-T33の時だけ、なぜかマッサージピールと呼んでいます。他のピーリング剤を使用する場合は塗ってある程度の時間をおいてから、中和して拭いとる手技を行います。PRX-T33を使用したマッサージピールの場合はTCAとH2O2の次のような効果を高めるために、肌をマッサージをするのです。
顔や首や胸の皮膚の張りを取り戻す
これはFacebookに投稿されていたRe•TOUCH Aestheticsという海外のクリニックの症例。ちょっと加工しているような気がしないでもないけど(苦笑)。
つまり、今までのピーリングのように角層の不要な皮膚の成分を浮かせて取り除くだけでは無く、コラーゲン繊維の形成を促す効果がPRX-T33を使ったピーリングでは期待できるのです。
マッサージピールとはPRX-T33を使った美肌だけでは無く、肌の張りも効果として期待できる新しい美容治療の1つであることが、私はこれでやっと理解できました。
次に残った謎の言葉「ベルベットスキン」の解明に進みますね。
例のダーマペン4を組み合わせるとベルベットスキン、ということです
昔々、若いときに乗っていた車は「ベルベットの上を走るような」と乗り心地をセールスマンが説明していました。ベルベットで思い浮かべるのは、「滑らか」ですよね。滑らかな肌、それがベルベットスキンとの表現が伝えたい状態だと思われます。
当院でも美容スタッフが「ベルベットスキン」との言葉を最近になってしきりに使用しています。「あのさあ、ベルベットスキンの定義を述べてよ」なんてことを言いそうな私ですが、最近はその辺りは若いスタッフも増えたことによって、かなり大人の対応ができるようになりました。
これがダーマペン4です。
当院だけでは無く、他の美容クリニックでも使用している「ベルベットスキン」とは、例のダーマペン4とPRX-T33を組み合わせた美肌治療のことだったのです。
ダーマペン4は先端に細い針が密集してついていて、それを細かく出し入れして肌に小さな穴をあける美肌治療です。
ダーマペン4で期待できる効果
- 毛穴の開きの改善
- 小じわの改善
- 肌のキメを細やかにする
- ニキビ跡を目立たなくする
このダーマペン4で期待できる効果に「肌の張りをプラス」する美肌治療方法が「ヴェルベットスキンを手に入れる方法」とか言われているものなんですね。
当院でも最近人気のあるダーマペン+PRX-T33の組み合わせ治療方法によって得られる効果がヴェルベットスキンである、これが今回私がやっとこたどり着いた結論です。
個人的に非常に興味を持ったPRX-T33のさらなる細かい説明と効果・効能に関して、近いうちにEvernoteにごっちゃごちゃに記録してある医学論文等を引用しながらブログを書こうかと思っています⋯多分、こんな細かい理屈っぽい話はだーれも読んでくれないだろけど(涙)。