厚生労働省が認可している美容医療用のヒアルロン酸として人気の【ジュビダーム ビスタ】シリーズ。
ジュビダームビスタ®ボリューマXCを五本木クリニックの院長が実際に治療してその効果と副作用や問題点について述べます。テクニックも大切ですがジュビダームビスタを扱う医師に問われるのは経験値です。
ジュビダームビスタ®という厚生労働省の承認を得た美容医療用ヒアルロン酸を試してみました
ジュビダームビスタ®(Juvederm Vista®)とは、日本で初めて厚生労働省の承認を得たヒアルロン酸の商品名です。アイルランドに本社を置くアラガンというヘルスケアの会社が販売している美容医療用のヒアルロン酸です。
厚生労働省が承認したと言っても、ジュビダームビスタ®を保険診療で使うことはできないことに注意してくださいね。
一般的にはシワの凹んだ部分にヒアルロン酸を注入する方法が一般的だったのですが、マニアックの美容皮膚科医達によってシワがある部分以外に注入することによって、引き上げ効果(リフトアップ効果ですね)が期待できるようになったのです。
アラガン社が厚生労働省の承認を得た、ジュビダームビスタ®シリーズの中に「ジュビダームビスタ®ボリューマXC(Juvederm Vista®VOLUMA®XC) 」というヒアルロン酸があり、これでどのようにリフトアップ効果があるかを試してみましたので説明しました。
あと、アラガン社はジュビダームビスタシリーズを日本で最初に厚生労働省の承認を得たヒアルロン酸であることをウリにしてるのですが、ちょっと問題があることについても後ほど述べさせていただきます(以前から、私はアラガン社の社風が苦手なんだよねえ)。
アラガン社ジュビダームビスタ®ボリューマ XCの5つの特徴
ジュビダームビスタ®ボリューマXCが他のヒアルロン酸と比較した場合の特徴を当院美容部担当の松下医師によると以下の5つの特徴があるとのことです。
(1) 長期持続性
アラガン社独自のVYCROSS技術により、注入後の分解吸収が非常にゆっくり進むため、従来のヒアルロン酸よりも長期間(約2年)にわたり効果が維持します。VYCROSS技術とは高分子量と低分子量のヒアルロン酸を混合することで、ヒアルロン酸同士を効率よく網目状に結びつけ、分解されにくくする技術です。
(2) 低吸水性
従来のヒアルロン酸製剤は高い保水力を持つため、注入後に体内の水分を吸収して膨らみ、予想以上に腫れて見えることがありました。ボリューマXCはヒアルロン酸同士が強固に架橋で結び付けられており、密な網目構造になっているため水分を取り込みにくく、注入時のイメージ通りの仕上がりが期待できます。
(3) ボリュームアップに適したリフト力
ボリューマXCは適度な弾性と凝集性をバランスよく併せもっているため、外力に打ち勝ち、効率よくボリュームアップすることでリフト力を維持できます。
(4) 優れた成形性
適度な弾性により外力が加わっても変形しにくく、また、凝集性も高いため、ひとつにまとまろうとする性質も強く成形性に優れています。
(5) 組織へのなじみの良さ
ボリューマXCは組織に馴染みやすく、表情に合わせた自然な仕上がりが期待できます。
では、この特徴をもったジュビダームビスタ®ボリューマXCを使った体験レポートを開始しまーす。
痛みも出血も腫れも無く無事終了
新型コロナ騒動で、スタッフ不足だったため、以下の症例写真(私が症例だけどね)は自撮りである点をご容赦くださいね。
私の場合、頬の皮下組織が老化とともに落ちだしていることと、頬骨についていて顔の筋肉を支えている靭帯の緩みによって、なんとなーく、締りののない、重力に逆らえない状況になっているそうです(松下医師談)。
ほうれい線ではなく、その上の頬骨付近(オレンジの線で囲った部位)にヒアルロン酸を注入するのです。
その理由として、靭帯の支持力を強めるために頬骨付近からジュビダームビスタ®ボリューマXCを注入。ジュビダームビスタ®ボリューマXCには麻酔剤が含まれているので全く痛みは感じません。
次に、ほうれい線の上の部分の狙ってジュビダームビスタ®ボリューマXCを注入します。ほうれい線の「線」にジュビダームビスタ®ボリューマXCを注入するわけじゃないのが今回の治療のポイントでもあります。
さらに厚生労働省に承認されたヒアルロン酸であるジュビダームビスタ®に附属している針を使用してしまうと、大問題というか悲惨なトラブルの原因になります(この問題に関して、後で詳しく述べます)。
ジュビダームビスタ®にはついてこない、当院がほかのヒアルロン酸注入時に使用している先が尖っていない針を使ってヒアルロン酸注入することによって、大問題かつ悲惨なトラブルは回避可能です。
先が尖っていない針(カニューレと呼びます)を使用して、ほうれい線の下の部分から上に向かってジュビダームビスタ®ボリューマXCをゆっくり注入します。
※尖っていない針を皮膚に挿入するために、針で皮膚の一部を切開します。切開といっても普通の注射の穴よりは小さい。
はい、これで完成。内出血(医学用語だと皮下出血)も腫れも痛みもなく無事終了しました。
もう少しジジュビダームビスタ®ボリューマXCを入れたかったのですが、仕入れ値も高額なので、2本で終了。様子をみて後日追加でさらに注入しても良いかもしれません。
今回の私の治療に使用したヒアルロン酸は2本。厚生労働省の承認を得たのがウリの一つである、ジュビダームビスタ®ボリューマXCはかなり高額な理由もたぶん、日本で最初に厚労省が認めたヒアルロン酸であるからだと思われます。
松下医師の見解によると既存のヒアルロン酸より長持ちするとのことですから、コスパ的にはそこそこだと解釈することも可能かもです。
にわか美容皮膚科医にジュビダームビスタ®の使用を任せてしまうとマズいかも⁉
ここからアラガン社のジュビダームビスタというヒアルロン酸に関して、注意点をお伝えします。
厚生労働省が承認したことを強くアピールしているジュビダームビスタ®。
そもそも古くからヒアルロン酸注入を美容領域で使用していた医師は、ヒアルロン酸を海外から個人輸入という形で入手して患者さんの治療に使用していました。
個人輸入で仕入れた医療機器や薬剤を患者さんに使用して、なんらかのトラブルが生じた場合、責任は100%輸入した医師にあります。
決められた使用方法以外では副作用被害救済制度が適用されない
通常、日本で使用されている薬を患者さんに使用して、副作用などのトラブルが発生しても多くの場合は独立行政法人医薬品医療機器総合機構 (PMDA) が運営する医薬品副作用被害救済制度によって患者さんの損失に対して補填が行われます。
アラガン社のジュビダームビスタ®は「高度管理医療機器 ヒアルロン酸使用軟組織注入材」として厚生労働省が承認されています。
しかし添付文書にかかれている使用方法以外の使い方で副作用が生じても救済されません。
私が体験したジュビダームビスタ®ボリフトXCは注射器に入ったヒアルロン酸と共に針も同封されいます。
その針はなん、尖った針なのです(鋭針)。
実は、美容皮膚科のプロフェッショナルがヒアルロン酸注入をするときに使用する針は「鈍針」と呼ばれる先端が尖っていないカニューレ状のものです。
このヒアルロン酸注入専用の針(カニューレ)を肌に突き刺してもこのように、全く皮膚に刺さりません。
なぜ、先端が尖っていないカニューレを使用するのかといいますと、ヒアルロン酸が血管内に入り込むと、血管が詰まってしまって取り返しのつかない副作用というか、トラブルを引き起こしてしまうからです。
目の周囲の血管にヒアルロン酸が入ってしまい血行不良のために、失明したことを報じた台湾のニュースです。
これはほうれい線治療にヒアルロン酸を注入したときに、鼻へいく血管にヒアルロン酸が入り込んでしまい、鼻の一部が壊死した例です。
安易なヒアルロン酸注入による副作用というか健康被害は日本でも起きています
アラガン社のヒアルロン酸は付属の針(先端が尖っているもの)を使用することによって、厚生労働省の承認を得ています。当院の美容担当医が私に使用したものは付属してきた針ではありません。
- カニューレを使用しないと皮下出血のリスクがでる。カニューレの先端は尖っていないので、血管を避けて皮下に侵入します。
- カニューレの先端は尖っていませんので、皮下の目に見えない血管を刺して、血管内にヒアルロン酸を注入してしまうことがありません。
ジュビダームビスタ®に同封されている針を使用すると、上記のトラブルが起きる可能性が強いわけです。
マジメな皮膚科医にかぎってメーカーの指導に従うはず⋯
一般の皮膚科医も自由診療の一環として、ヒアルロン酸注入を取り入れているところが多くなりました。
真面目な皮膚科医はメーカーの指導通りに先端の尖った針を使用して、治療している可能性が大です。
添付文書に従って使用したほうがリスキーになってしまう可能性があるのが、アラガン社のヒアルロン酸「ジュビダームビスタ」シリーズであることを知っておいて損はないと思います。
ちなみに当院ではアラガン社が厚生労働省の承認を得る遥か以前から、医師が個人輸入という形で海外から直接「ジュビダーム」(ビスタはアラガン社が個人輸入のジュビダームと区別するために付けたもの)を仕入れて、多数の経験を積んでいます。